stsk 短編 | ナノ






今も昔も。


〜君を/木ノ瀬 の続き〜












君に逢いたくて。


すきだと言いたくて。










「梓〜?」


「翼か…。何?
僕今、寝かけて気持ちよかったんだけど」


「ぬわっ、ごめん!!」





日本行きの飛行機の中。

僕と従兄弟の翼は隣同士の席で座っている。
寝かけていた僕を起こして罪悪感が出てきたのか、翼はオロオロしている。


いいから用件言ってよ。







「…ぬ。梓、さ。会うつもりなのか?」


「…当たり前。
今でもすきなんだ」


「…でも、彼氏とかいるかもしれないんだぞ…?」



「……いいんだ。
僕の気持ちを知ってもらうだけで」


「…勝手だと思う」


「はは。
うん、僕もそう思うよ」








勝手に元カレが帰ってきて、気まずい雰囲気でいきなり告白されても迷惑なだけなんだ。


でも、それでも。











「んーっ、着いたね」


「そうだな!!
じゃあ、ぬいぬい呼ぶぞー」

「…ああ、そういえば不知火先輩に迎え頼んでたんだっけ」


「そーなのだー」





そうして携帯を取り出す翼。何コールかして先輩が出て、翼は場所を教えるために遠くに行ってしまった。


どうやら近くには来ているみたいだ。




僕は溜め息を吐いてからぼーっと突っ立っていた。






「元気、なのかな…」




彼女に逢いたい。

こんな時間も惜しいくらい。 君に、逢いたくて。






「(女々しいかな…)」



というか、翼はまだなのだろうか。



なんて、考えていると。











とんとん



軽く、肩を叩かれる感覚。







翼か?

肩を叩くなんてらしくないな。






「なに、つば…」





振り向いて驚いた。





『…ひさしぶり、木ノ瀬くん』



「名前…?」



『ん、そう。
一樹会長から誘われて二人を迎えに来たの』





彼女は『身長とか髪の長さ以外かわってないね』と笑う。

僕がすきだったあの笑顔で。




「っ、」


『へあっ…!?きの、せく…ん?』





気づいたら抱きしめていて。

頭の中はぐるぐると彼女でいっぱいで。
腕の中の存在に安心している僕がいたりしていて。







『……あのね、木ノ瀬くん』


「……ん、」


『私ね、本当は別れたくなかったんだ。別れて大学に通った後も、木ノ瀬くん何してるんだろうなあとかたくさん考えてた』


「!!」


『……未練がましいかなーってコノ気持ち、封印してたの。
でも、今なら。一樹会長に説得された今なら言える気がする』


「え…」


『木ノ瀬くん、私はずっと君がすきでした。でもね、もう一度付き合ってとか言わないから。さようならだよ。もう一切、君には関わらない。最後に抱きしめてくれるなんて思わなかった。ここに来たのも少しは意味があったのかも』





にこりと笑って彼女は僕の腕から抜け、後ろを向けて歩いていく。

腕の中から抜ける時、何だか彼女が泣いていた気がした。



自然と足は動いて、数メートル先にいた彼女の腕を引っ張って引き寄せる。




『っ!?、木ノ瀬くん…!?』


「…名前も僕もバカだよ。お互いに素直な気持ちが言えない。…ねえ、付き合いたくないなんて嘘だろ?さようならなんて嘘だろ…?」


『木ノ瀬くん…?』


「……ごめん。
きっと、あの時に言えばよかったんだ。別れたあの時に。
名前、僕は付き合い始めてからずっとすきだったよ」


『……え』


「もちろん、今でも。
今回帰国したのは、それを伝えるためだった。
…もう随分と苦しめて、悩ませた。

今更で遅くなっちゃったけど…。僕と、また付き合ってください」




『っはい……!!』





ボロボロと泣き出す君の綺麗な涙を唇で吸い取って、優しく瞼にキスをする。


大切にするよ。

君と別れてから今日までの時間はどうやっても埋めれないけれど。それ以上に、君を大切にするから。








僕の腕におさまっている彼女の後ろから涙目になって満面の笑みでこっちに走ってくる翼と優しく笑う不知火先輩が見る。


そして僕は、
彼女を抱きしめる腕に精一杯の力を込めた。





今も昔も。

(君でいっぱいの)
(頭ん中)



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友達にリクしてもらったものです。

リク…というか、
続きが気になるからよかったらかいて!!と嬉しいことを言われたのです。


いい友達が私の周りには多いです笑