short | ナノ


▼ 白い少女、膝の上で困惑する

!あらすじ!
【気付いたら見知らぬ場所。気付いたら小さくなってた身体。気付いたら、お偉いさんの膝の上。
ロリになった女子高生が、見知らぬ世界に飛ばされてたってだけ。
言葉は全く通じないけど、どうすれば戻れるかもわからないけど、とりあえず、今日も困惑する。お偉いさんの膝の上で】





「kaoubgna:p;rgna」

 膝を折って頭を垂れる青年。
 彼が身に着ける白いマントが、風でひらりとはためいた。
 色とりどりの花弁が舞い、大きな旗が振られている。
 青年の後ろには、多くの人間が膝を折り、右手を左胸に当てていた。

「alkesngpauorl;kp]a:w\/!!」

 誰かが言ったその一言から、輪唱するように広がっていく。
 小さな子供たちが、手に持った花弁を宙へと向けた。

「alesn;gaen]:\:/.m」

 ひらひらと舞う花弁。
 子供たちが満面の笑みを向けているのは、檀上で変わらぬ表情を浮かべる白い少女だった。
 白い少女が口を開いた。

「ぱーどぅん?」

 その声を聞いたものは、誰もいない。






 青い空、漂う雲。
 夏真っ盛りのその日。
 私は神隠しにあった。

「いや、神隠しってナニ」

 私はいつも通り、学校へと向かうバスに乗った、はずだったんだけどなぁ。
 首を傾げて、空を見上げた。
 やけに空が遠く、木々が高く、雲が大きい。
 え、ま、え、私ってこんなに小さかったかな? 身長は平均より上の166pだったはずだし、体重はまあ、その身長が身長だからしかたない。
 手も足も長かったし、と、手を伸ばしてみた。

「ちっさ!」

 なにこのぷにぷに、なにこの肌の白さ、何この手の短さ!
 ううん? ううん?
 ある一つの予測をして、急いであたりを見渡した。
 何処を見ても木、木、木、あと花畑! 自然しかないそこには、人工的な建物は何一つなかった。
 水、とにかく水探さなきゃ!
 いつも通り足を動かそうとした瞬間、こけた。

「わっ!」

 そうして素の声を聴いて、なんだか自分の声が若返ってることに気付く。
 あれ、これ、あれ、なんか声がかなり高いって言うか、なんか子供っぽいって言うか……
 自分の身体をぺたぺたと触った。小さい。顔も、手足も、髪の毛は逆に伸びてる。
 肩の上までだった髪が、腰まで伸びてるとかなんで! 髪の毛を掴んで持ち上げてみる。よかった、色までは変わってない!
 だけど肌の色は明らかに変わっていた。東洋人らしく、よくベイビーピンクと言われていた肌色が、欧米人でもさすがにコレはねぇだろ、と言いたくなる真っ白肌に!
 病弱なひとなみの白さに、たぶん欧米人もドン引きすると思う。
 外に一歩も出たことないです、と言わんばかりのそれに、さすがの私もドン引きだ。
 いや今この身体は私のものなわけなんだけど、それでもちょっとなぁ、って思っちゃう。だって仕方ないじゃないか。
 見知らぬ場所、いきなり若返ったからだ、色の違う自分の肌、容姿。いきなりこんなことになれば、誰もドン引きしたくなるし、誰でも不安になる。
 ほんと、どこだよココ。
 現代高校生に準備なしのサバイバルは鬼畜だよ、もう……。
 家に帰りたい。

「いえにかえせこんちくしょー」

 暴言を吐いても可愛らしい声にチェンジ。
 さらに舌足らずになるし、もうやだこの声。自分できくたびに羞恥に悶える。
 木の下に蹲って、とりあえず誰かこないかな、と待ちぼうけ。
 こんなところになんて来たことないし、身体小さくなってるし。
 なにこれファンタジー? やった異世界だ! なんて喜べる歳でもない。いや、正しくは現実の辛さを知ったっていうか。
 高校生にもなれば、もう異世界だとかなんだとかが存在しないことくらい解ってくる。だって、本当にあったとしたら、多くの望んでる人が行けちゃうでしょ?
 望めば存在する時代に、もしもそんなものがあったとしたら。
 これはもう、コ○ン説しかないのかなぁ。某見た目は子供、頭脳は大人! その名も、のひとみたいに、何やら怪しい薬を飲まされたとか。
 それだったらまだ納得できる。そう、納得できるんだけどなぁ。
 持っていたはずの鞄も、来ていたはずの制服も、手に持っていたはずのICカードも、どこにもない。せめて携帯さえあれば、家とか学校とかに連絡できるのに。
 まったく、薬飲ましたヤツ出てこいや! あ、やっぱ出てこなくていいです! なんか殺されそうで怖いんで。

 ザクッ

「ざく?」

 ザクッ。
 ザクッ、ザクッ。
 木の葉を踏み鳴らしながら歩く、その足音。
 ざわざわと木が揺れて、葉が舞い散っていくその音さえ、そんな足音に消されていく。
 不思議と、胸がどきどきした。別にかくれんぼをしてるわけじゃあない。なのに、胸の奥がどきどきして仕方がない。
 このまま見つかって、助けてもらいたいような、でもやっぱり助けてもらいたくないような、そんな何か。

「379tug9pa:]kp;dbg ja;lnkds」

 不思議な音だった。
 耳に残る、不思議なその言語。
 英語でもない、かといって母国の詞葉でもないそれが、放たれる振動から耳の穴を通って鼓膜へと向かう。
 鼓膜を震わせた振動は脳まで届いて、その音色を響かせた。
 力が抜ける。
 私の全身に影が差して、目の前に見えていた花畑が隠れた。

「13up;madgab ;@akgna:;/e\a」

 見つけた。
 そう言われたような気がして、差し伸べられた手を見る。
 黒い何かで手を多い隠したその、たぶんヒトは、長い前髪を揺らしながら、ぐっと私の手を引いた。
 そのままの勢いで持ち上げると、まるで小さな子をあやすように、背中を撫でる。
 心地よいリズム。私じゃない、この身体そのものが、緩やかな眠りへと誘われていく。
 意識が遠のいて行って、小さな子守唄が聞こえた。
 瞼の裏が、熱い。




 出逢いはこんな感じだった。
 いきなり誘拐されて、体は小さいままで、そんな私を連れて行ったそのヒトは、黒い装束に身を包んでいた。
 いきなり大きな屋敷に連れていかれた私は、その場で黒いヒトに跪かれた。
 まずここなんだけど、いきなり知らないヒトに跪かれたらさ、誰でも驚くよね。目を見開いて大声あげちゃった私は仕方ないよね?
 これはもう仕方がないとしか言いようがないよね? なんか黒いヒトが苦笑してた気がするけど、見た目も小さな子供だし大丈夫だよね!
 連れていかれた屋敷で黒いヒトに跪かれた後、いきなり赤い服に身を包んだ女の人たちに囲まれた。
 ひと、って言っても猫耳がついてましたけどね! 三毛猫かなあ、イイな触りたいなぁ、とか現実逃避です。
 あれよあれよと水浴びさせられ、気づけば真っ白な装束を着せられていた私。
 そのまま姫様ベッド、みたいな感じのベッドに連れていかれたかと思いきや、黒と金の装束に身を包んだ人が寝てた。
 え、これをどうしろって? と思っていると、女の人たちがその人に声を掛けた。
 なんていったかはわからなかったけど、どうやら寝ている人はかなり高位のひとらしい。
 起き上がったその人は、自分の膝をぽんぽんと叩いた。すると、女の人たちが私を持ち上げた、その人の膝の上に乗せた。
 なんでやねん。

「@aomgpaip4u@a@p:;ga\f;:/a」

 なんて言ってるかはわからなかった。
 ただ膝の上に座った私の頭を撫でると、そのまま私を抱えて寝転んだ。
 え、寝るんですか? すみません、その前に貴方誰なんですか!
 口を開けて、でも出てくるのはヒューヒューとした空気の音だけ。
 そんな私を見て、その人は私の頭を撫でて笑った。
 笑い声は同じなんだなー、と変な思考をしてると、その人がかぶっていた何かをとった。

「kaeougban:?」

 わお、イケメン。


 と、言うのが、ここでの私の保護者となった、とぉっても偉い人との出会いだった。


 そのあとの私といえば、言語も何もわからないまま、せっせと服を着せられいろんなところに連れていかれた。
 いつもどこでもお偉いさんと一緒に連れていかれ、毎回のベストポジションはお偉いさんの膝の上。
 一体どうなってるのか、混乱してる暇もないままいろんなところに連れられてもいろんな人に見られた。
 え、本当に一体どうなってるの、と考える。そんなことを考えていると、何時の間にかベッドの中でお偉いさんと寝てる。
 ココでの私の扱いは完全なる子供だ。いやまあ見た目が見た目だから、そりゃ仕方ないかもしれないけどさ。
 一人で食べれるけど、何かしようとするとすぐにお偉いさんに見つかる。そして食べるときもお偉いさんが手ずからだ。
 イイのかお偉いさん。なんか女の人たちとか、近くにいるひとたちがほわわんと微笑んでるけども!
 相も変わらず膝の上に乗せられている生活。
 だけど気付くと、もうすっかりそれに慣れてしまっているのも、もうどうしようもない事実なのだ。

 やばい、ニート生活だどうしよう。

 ここで、冒頭に戻るわけだ。


 気付くとかなりの長い間、お偉いさんの膝の上で生活してた私。
 まったく知らない場所に連れていかれたかと思いきや、ものすごく贅沢な生活をしながら豪華な椅子の、そこに座ってるお偉いさんの膝の上だ。
 お腹をぽんぽんと撫でられ、じーっとお偉いさんを見た。
 くつくつと男前に笑うお偉いさんは、指輪がいっぱいついた指を空へと向けた。
 ふわふわと飛んでいる蝶が、お偉いさんが指ぱっちんをした瞬間に花弁に変わった。
 ひらひらひらひらと舞う花弁が、お偉いさんの手にたどりつく。
 その花びらを、お偉いさんが私の掌に置いた。可愛い、綺麗な色の花弁だった。

 いつ帰れるのか、なんでこんな身体なのか、その前に、まず会話ができればいいな。
 そう祈りながら花弁を眺めた。
 家に帰りたい、けど、実はお偉いさんの膝の上も、好きだったりするのだけどね。

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