チャンネル争い
「わーっ何でチャンネル変えるんですか観てたのに!」
「うっせーな俺は怪人倒してきて疲れてんだよ優しくしろ」
「先生の八宝菜のうずら多めにしたじゃないですか!」
ぎゃあぎゃあ文句をまくし立てると「近所迷惑」と手の平で口を塞がれる。ご近所いないんですけど!
先生の集中がテレビ画面に向かった隙を狙って、テーブルの上のリモコンを弾き飛ばす。そのままリモコンは部屋の隅まで滑ってゴミ箱をボーリングのピンの如く倒した。
「お前ゴミ散っただろーが!」
「デゼニールランド特集見るんですよ! 新アトラクション特集やってるんです!」
さっきまで観ていたのが何チャンネルか分からないから選局ボタンを連打してると先生も連打し始めた。ゴミ散ったと怒っておきながら先生だってテーブルの上の食器落としてお箸が床に転がってる。
「やだ先生そんなに強くしたら壊れちゃう…!」
「気色悪ィ声出すんじゃねえよ!!」
ちょっとした悪ふざけなのに先生がつるつるの額に青筋まで立てて怒るから、その勢いでリモコンが四散した。
先生もさすがに壊す気はなかったらしく、呆然とリモコンだった欠片を見つめる。その後お互いを放心した状態で見合っていると、キャンキャンと仔犬の可愛らしい鳴き声が響いた。
テレビの方を見遣るとプリティーでキュートなビーグルが耳を振り乱し元気に走り回る映像がファンシーなBGMと共に流れていた。
「犬いいな」
「犬いいですね」
和解した私たちはとりあえず散らかった部屋を片付け始めた。