お昼前ミーティング
「先生、お昼焼きそばでいいですか?」
「焼きそばは何日か前に食っただろ」
「だって作るの楽なんだもん」
「なんか別の作れねーの?」
「うーん……何が食べたいですか?」
「なんでもいいけど」
「じゃあ焼きそばでいいじゃん」
冷蔵庫の中を覗き込みながら何を具に入れようかと考えていると、先生がう〜んと煮え切らない態度で唸っている。
「なんか……焼きそばの気分ではない」
「それじゃあ何の気分なんです」
先生は読んでいた漫画を放り出して再び唸り始めた。
「そんなに悩むなら焼きそばにしようよ」
「ん〜〜……」
そうやって暫く考え込んでいるようなので私は冷蔵庫から麦茶の瓶だけ取り出し、しめてしまった。グラスに注ぐと氷が涼しげな音を立てる。
冷蔵庫に背中を預けて、悩む先生の頭頂部をまじまじと見つめる。するとその視線に気付いたように先生がいきなり顔を上げた。
「うわっ」
「わかった、あんま腹減ってないから食べたいもの思いつかねーんだ」
先生は立ち上がると流れるようにシャツを脱ぎ出す。
「うわわわわ何してんですか!」
「ちょっと運動してくる」
そして先生がヒーロースーツを着て出ていって数分後、地響きと共にグラスに入った麦茶がかたかたと揺れた。
それからまた数分後に先生は帰ってきて、手袋をお風呂場の水を張った洗面器に放り込むとどっかり座り込んだ。
「焼きそばまだ?」
「い……今作ります」