寝覚めのコーヒー
「やっべえ今日燃えるゴミの日だ」
それまで隣で歯を磨いていた先生が青褪める。壁に掛けられた時計を見ると、もうすぐゴミ収集車の来る時間だった。
「早く出さなくちゃまずいですよ」
「よろしく」
「嫌ですよ面倒くさい!」
「俺もめんどい」
結局じゃんけんに負けた私が寝ぐせを直す暇もなく、ごみ袋を持って階段を駆け下りることとなった。収集車にはなんとか間に合ったけど、起き抜けに全力疾走したからふらふらする。息を切らしながら部屋へ戻ると、先生はベランダでサボテンに水をやっていた。
「おうおかえり」
「ただいまです……」
まだ出しっぱなしの布団に倒れ込むと、先生がじょうろを片手に私を跨ぎ台所へ向かった。
「今日は俺がコーヒーいれる」
「え? なんで?」
「なんか優しい気分だから」
先生は心なしかうきうきしているように見える。ふとベランダに目をやるとサボテンにつぼみが付いていた。私まで微笑ましい気分になる。
「先生、私のやつはお砂糖入れ……ってヤカン使って下さい!」
立ち上がって見てみると先生はフライパンに水を張って火にかけていた。
「うるせえ文句言うな」
「ちゃんと優しくしてくれないと実家帰りますよ!」
「帰れよ」
「帰りませんよ!」