ルルーシュの部屋はいつだって肌寒い位まで冷えきっていて、外の蒸し暑さなんて微塵も感じられない。










◇青少年の夏休み◇










「ちょっと冷えすぎじゃない?」

「適温だ」

「身体に悪いのに」

「不満なら出てけ」

「エー…」



会話しながらも二人の視線は目の前の画面を注視して、両手は忙しなくコントローラーのボタンを捌く。



「今日双子は?」

「学校の友達とプール」

「双子達は君よりアクティブだよね」

「何が言いたい」

「べつにー?」



画面で共闘していた筈のルルーシュの持ちキャラがスザクの持ちキャラを攻撃した。



「イタッ!」

「ふん」

「陰湿だよなぁ」

「ウルサイ」



澄ました顔をして画面に向かっていたルルーシュがふと動きを止めて、ベッドからずるずるとタオルケットを引っ張ってくる。
タオルケットをすっぽり頭から被ってゲームを続けるルルーシュをスザクは呆れて眺めた。



「やっぱり寒いんじゃないか」

「別に寒いわけじゃない」

「よく言うよ」

「この至福の心地がわからないなんて可哀想な奴だな」

「風邪引くよ?」

「夏風邪の心配があるのはむしろお前だ」

「?君みたいに不健康な生活はしてない」

「ほら、そういうところさ」



馬鹿にしたように笑うルルーシュにスザクはカチンとする。



「夏休みだって言うのに夏らしい事しないでずっと室内とか」

「なんだよ」

「夏の無駄遣いだよね」

「別に夏を有効に使おうなんて思ってない」

「こないだの花火も誘ったのに結局行かないし」

「誰が好き好んでわざわざ人混みになんか」


小さく肩を竦めるルルーシュをじとっと見詰めながら、スザクは自らの言葉にあることを思い出して心の中でニヤリと笑った。



「あ」

「なんだよ」

「花火と言えばさ!」

「…なに」

「部活の先輩が彼女と行ったんだって!」

「…ふーん」

「それでさ」

「うん」

「その日に初めて彼女とヤッたんだって!」

「…何を」

「セックスだよ!セックス!」



あからさまな単語を口にするとルルーシュの眉間に皺が寄るのがわかって、スザクは内心舌を出す。
ルルーシュはこういった話に疎い。
自分から積極的に話しもしないし、誰かが話しても話題に乗ってこない。
思った通りの反応に悪戯心が芽生えて、更に言葉を重ねた。



「なんかフェラは嫌がってしてくれなかったんだって!」

「………」

「でも胸がおっきいからそのうちパイズリでもしてくれないかなーって言っててさ!」

「………」

「フェラとパイズリならどっちがハードル低いんだろうね?」

「………」

「めちゃくちゃ気持ちよかったって自慢されてさー」

「………」

「やっぱりオナニーの比じゃ無いって!」

「………」

「いいなぁ…僕も早く彼女欲しい」

「………」



ルルーシュからの反応が一切返ってこなくなって、やり過ぎたか?と再びゲームに向かっていた意識と視線をルルーシュに戻す。
さっきまで顔は出していたのに、今はタオルケットにすっぽり覆われて顔も見えない。



「ルルーシュ?」

「………」

「ルルーーーシューーー?」

「………」



いつも口で言い負かされるルルーシュに今回ばかりは勝った!と妙な優越感を感じ、小さく笑いながらタオルケットでぐるぐる巻きのルルーシュの頭(があると予想される場所)をぺしぺしと軽く叩く。



「ルルーシュは変なトコで潔癖だ、っ?!」


言い終わる前にタオルケットからにゅっと伸びてきた白く細い腕に不意打ちで腕を掴まれ、スザクは体勢を崩した。
咄嗟に受け身は取ったものの、そのまま強かにフローリングに頭を打ち付けて頭の中がぐわんと揺れる。
衝撃に固く閉じていた目を開くと自分に覆い被さる様にのし掛かっているルルーシュが目に入った。



「そんなに興味あるなら俺が協力してやるよ」

「……?」

「パイズリ、は無理だけどな?」

「?!」



聞き間違いか頭の打ち所かおかしかったのかスザクはとんでもない発言を聞いている気がする。

中途半端ににタオルケットを引っ掛けたまま目の前で今まで見たことの無い表情で妖艶に笑うルルーシュが知らない生き物に見えて、スザクは背筋に冷たいものが伝うのを感じた。





end









第3者目線で書いてみたくて挫折。