私は今、大学の課題に追われてる。 明日の午前中までにこのレポートを完成させなきゃいけないのに、進行度はまだ4割。 …嘘、実際2割。 それなのに! あって無いような集中力が全部持ってかれてる。 ちょっと聞いてくれる?! ◇女子大生Aの目撃証言◇ 私は、課題に手を付ける為にお気に入りのカフェに来てる。 家でとか、プライベートな空間だから逆に今しなくて良いような掃除とかしちゃわない?私だけ? 大学の図書館も、静かな空間が耐えられないから却下。 みんなよくあんな所で長時間頑張れるよね。マジ尊敬する。 その点、普段からよく通ってるこのカフェはプライベートほど緩く無くて図書館ほど気を張ら無くていいし、店内の雰囲気も落ち着いててスタッフの教育もばっちり。 お客さんの入れ替わりが激しいわけでもなくって、長居するタイプの人が多いと思う。 要は居心地がいいのかな。 そんないつものお店で、いつもはしない課題に取り掛かり始めたのは1時間前。 慣れない体制で慣れない課題をこなしていたら、流石に身体が固まっちゃった。 テーブルから顔を上げて、座ったままで軽くストレッチ。 そしたら! びっくりしちゃった。 視線の先にすっごい美人! 艶々な黒髪に真っ白い肌。 眼が大きくって睫毛が超長そう。つけま? 鼻筋が真っ直ぐ通ってて口はちっちゃい。 なんかこんな表現で悪いけど、お伽噺のお姫様みたい! 白雪姫とかそんな感じよね? それで超小顔!ヤバい! 思わず自分の掌を広げてまじまじ見ちゃった。 もしかしてこの位じゃない?言い過ぎ?? 顔があんなにちっちゃいのに首が折れそうな位細いって何事なの。 羨ましい! そんな彼女の席はアタシから少し離れた所。 店の一番奥の、通りに面したガラス張りの席に座って本を読みながらコーヒーかな?を、飲んでる。 それだけで絵になってるとか、一体何者? そこに居るだけで眼を惹く人ってマジでいるんだ…。 吃驚した。 芸能人?じゃ、無いよね…? 周りのお客さんもチラチラ彼女に視線を送ってるのがわかる。 うんうん。見ちゃうよね!超わかる! そんな彼女は見られても平然と読書に集中してるみたい。 やっぱり慣れてるのかなぁ。 あんまりジッと見てると怪しいし、課題をやってる風に彼女を盗み見る。 女のアタシでもドキドキしちゃう。 やっぱり美人って目の保養。 あ、なんか携帯を触り始めた…メールかな? なんか拗ねた顔してる!超可愛い! クールな美人かと思ったら可愛い顔もするんだー。 なんか得した気分。 課題を少しずつ進めながら彼女を盗み見る事、30分。 通り側から彼女の座ってる席に近付いてくる男の子。 え?ナンパ?ガラス越しに? とか思ってたら、彼女が気付いて男の子に片手を上げてる。 男の子は嬉しそうな顔をしてお店の入口の方に走っていった。 知り合いなのかな。 なんて考えてたら、お店の人の『いらっしゃいませ』の声。 そっちに顔を向けると、やっぱりさっきの彼だった。 真っ直ぐ彼女の方に向かってる。 『遅くなってゴメンね』 って言ってるのが小さく聞こえたけど、彼女の返答までは聞き取れなかった。残念。 でも綺麗な笑顔で受け答えしてるから、怒ったりはして無いんだろうな。 …????? なんか今、遅れて来たらしい彼が席に着く前に凄い眼で店内を見回したんだけど…。 どうしたんだろう…。 一瞬の事だったから見間違えかもしれないけど、なんか背中がゾクッとしたような…。 気のせいかな。 勉強真面目にし過ぎて疲れてるのかも。 彼女は彼が来て、凄く嬉しいみたいで物凄く可愛い顔で笑ってる。 あ!もしかして彼氏? そう思ったら納得! さっきのメールの相手も彼氏かな? 遅れるって言われて拗ねた顔してたとか? 何それ超可愛い! そうなると、俄然気になるのは彼氏だよね。 あんな美人と付き合うとか競争率激しそうだし。 そんな競争を勝ち残った人とか、すっごい気になる! 隣の美人に奪われてた眼を、その向かいに座る彼氏に向ける。 うんうん。今時のイケメン。 ふわふわの茶色の髪は、ワックスでセットしてあるのかな? 肌も健康的に日に焼けてて、スポーツでもしてそうなしっかりした体つきっぽいのが見て分かる。 笑うと童顔なのが強調されて可愛い系だけど、美人な彼女と並んでも違和感は感じない男前だと思うな。 お似合いじゃん。 なーんて。 人の評価する前に自分を何とかしろだよねー。 ちょっと自分を省みて凹んでたら、二人が席を立った。 あーあ。もう行っちゃうのかなー。 っていうか! わ、わ、わ!彼女、背高い…! 隣に並んでる彼と一緒くらいじゃん?! わー…顔ちっちゃいからあんなに背が高いと思わなかった…。 うっわ足なっが! マジ、モデルっぽい…。 彼氏は自然に彼女の腰に腕を回してエスコート。 流石!出来る男だな。 「っおい!スザク!」 ………………え。 「こういう所で、止めろっていってるだろ!」 「あー…ごめんごめん」 「全く、お前全然聞いてないな」 「聞いてるって」 仲良く会話を繰り広げながら、レジに向かうカップル。 あれ?でも、彼女の声低…ッ! これってもしかしなくても、男の人みたいな…?! 疑惑が芽生えて、もう一度『彼女』に眼をやる。 頭は小さくて小作りな顔はやっぱり凄く美人。 大きめのカーデのせいで体型はよく分からないけど、伸びた脚は細くて長い。 見れば見るほど、モデル体型の美人だけど… 「ご馳走さまでした。ありがとう」 レジを後にする際に発してた声は、確かに男の人のものだった。 『彼女』は『彼』だったらしい。 マジでか。 まぁ、とにかく。 男の子同士の友情ってものが、仲の良い友人の腰に手を回してエスコートするものなのかは、所詮女のアタシにはわからないし。 アタシは気持ちを切り替えて、明日までの課題に取り掛かろうと思います。 「ルルーシュ、窓際の席は止めておいてっていったじゃん」 「案内されたんだからしょうがないだろ」 「もー…みんな見てたよ!君のこと!」 「そんな訳無いだろう。またすぐお前はおかしな事を…」 「本当だって…!あーあ。もっとちゃんと牽制しとけば良かった」 「………心配なら、早く来い」 「え?」 「ふん」 「っ!!もう!ルルーシュかっわいいなぁ!」 「バッ!だから、こんな所で止めろって…!」 「君が可愛いのが悪い!」 「はぁ?!」 end スザルルを目撃したら付け回しますけどね。 |