憶えているのは涙と恐怖で歪んだよく知る顔。泥に塗れながら自分にしがみ付く小さく柔らかな掌。
その手が邪魔で俺は殴り倒した。それでも泥に塗れ泣きながら弟は俺の足に縋りつく。不快にも愉快にも思わなかった。
一層の事こいつでも良い。逃げる獲物より瀕死の獲物の方が壊すに易い。小さな死より大きな死の方が確認に易い。
そう思いながらも、俺はまだ幼い弟を殺せずに、泥と血だらけの弟を抱き締めた。弟の顔が更に歪んで引き攣った様に見えた。そして弟はもう泣かなかった。
「なら止める」と俺は云った。云った筈だ。俺は弟をちゃんと抱き締めていた。抱き締めていた筈だ。遠くから俺達に向かって走ってくる兄が見えた。また叱られると覚悟をした。覚悟した筈なのに。
次に憶えているのは、泣きそうな顔で―――実際泣いていたのかも知れない―――俺を抱き締める兄と、笑う弟の姿なのだ。
それ以降は憶えていない。ただ、俺達は揃って兄に同じ事を訊いた。

『なしてじゅうにいが泣くん?』





禁じられた遊び





16年前―――俺はまだ4歳で、兄は9歳だった。雪が降り、梅が咲き、そして桜も散り始めた頃、あまりにも綺麗な青い炎が上がった。それは木でも家屋でもなく、人間から。一番上の兄が青い炎に飲まれるのを見た。俺は泣いた。
今ならはっきりと云える。大切な人間達が死んだから泣いたのではない。それは記憶と理由の美しい後付けにしか過ぎない。
単に純粋な畏怖と、知っていた固形が形ばかりを残した違う固形に変わる恐怖と、蛋白質が焼ける臭いに顔を顰めて泣いたのだ。倫理も道徳も無い。

その夜を越えて。
両親や兄は二つの遺体を清め、御座なりな死に化粧を施した。御座なりとは云え、祖父が、長兄が、事切れてただの物と化したあの時の姿よりは見れる顔をしていた。無理矢理作らされた穏やかな死に顔。
家の大人達は二人に白装束を着せ、胸元で手を合掌させたり数珠をかけて寝かせたりする作業をしていた。「次は枕飾りやな」いつも通りの声音でそう云う父に、枕かざりとは何かと問うたら邪魔だと追い払われた。
子供は如何やら葬式の準備には邪魔らしい。皆多忙そうだから自分なりに手伝おうと思ったのにも関わらずその調子だから、詰まらなくて遊びに行こうとしたら止められた。訳が判らない。邪魔になるなら俺は居ない方が良いだろうに。
そうして俺達は父の枕経を聞きながら仮通夜を終えた。祖父と長兄の亡骸に父母や上の兄が何処か物寂しげに読経をするのを見て、わざと悲しそうな顔をして似た言葉を紡いだ。
一体何に対して詠んでいるのかさえ判らなかった。ただ、見よう見まねに手を合わせて顔を歪めて皆と似た文句を唱えただけだ。
納棺を終え、通夜に入ると家に人の出入りが激しくなった。同じ言葉を繰り返す家族と明陀の衆が馬鹿馬鹿しくて俺はバレないように溜息を吐いた。母の作った通夜ぶるまいは美味かった。
青い炎に呑まれた人間を今度は人為的に炎にかける。それはあまりにも滑稽で機械的に感じた。骨になった明陀の身内達は想像以上に白くは無くて、紫や朱に色付いた骨もあった。祖父の骨も同様だった。

「柔兄、じいちゃのほね、白うない」

そう兄に訊くと、兄は沈痛な面持ちの儘に場都が悪そうに溜息を吐き、こっそりと耳打ちをしてきた。

「じいちゃは躰がようなくて薬を飲んどったやろ。薬をたくさん飲むと骨が薬の色に染まってまう事があるんや」
「ふうん」

なら俺の骨は何色なのだろう。躰は健康であったし、まだ何にも染まらない純粋な白だろうか。ならば標本の様な白がいい。染まっているのならば折角だから黒が良い。骨は何故か高温で焼いても黒にはならない様であったから。
喪に服し、嘆く大人達を冷めた心で見ていたのだと思う。ただ俺はこんな春先の良い日差しの日に、よくこんな陰気で鬱々とした儀式をやるものだと思った。
正座をするのには幾分か慣れてはいたが、長時間となればまた別で、悲哀とは違う生理的な意味で涙が出た。次々行われる葬儀はただ面倒で面白みも無かった。儀式と云うのは総じて面倒臭いものだ。
それでも大人達はこの儀式に真剣に涙し、一通りの作業が終わると『通夜ぶるまい』で集い語らう。時に故人を思い泣き笑い、明陀や世界の未来を思い嘆き沈み、また全く関係ない別の話で笑った。



「―――力のある聖職者が殺されたんや」

幾らかの葬儀の帰り道。度重なる葬儀への疲れに息を吐きながら次期頭首にあたる柔兄と一番後ろを歩いていた時、前を歩く父の声がふと耳に入った。

「なんやぁ。ならほこるべきなんや。みんな力があったから、つよいから。やからころされたんやろ」

そう淡々と呟いた瞬間、右頬がよく知る熱さに襲われた。柔兄が泣きそうな、恐ろしくおぞましい何かを見る目付きで俺を見ていた。
俺の頬を打った兄の右手が震えていた。俺は後からきた痛みと、大好きな兄に拒絶された気がして嗚咽を漏らした。柔兄が俺の両肩を痛い程に握り締めたので、火を吹く様に更に泣いた。

「金造、二度と云うな。誰にも云うな」

柔兄の声が震えているのに気付くと、何故か涙は治まった。もしかしたら、多分、兄も同じ事を思っていたのでは無いだろうか―――そう今なら思える。
ただその時は、そんな兄の心情よりも兄の表情に対する恐怖と反発心と寂寥感の方が強くて、兄の手から身を捩って抜け出し走った。吃驚した家族が名を呼ぶのが遠くに聞こえた。
息を切らして辿り着いた真新しい誰かの墓の横に座って、兄や姉や父母に見付けてもらうのを蹲って待っていた。涙は疾うに止まっていて、ただやるせない沸々とした気持ちだけが残っていた。座りこんだ土は陽の陰になっていた所為もあってかまだ冷たかった。
ふと足の方から人の声が聴こえ顔を上げた。葬列だ。思わず立ち上がり木の隙間に移動し、まだ綺麗な落ち葉の上に座り直してその葬列を丘の上から眺めた。

―――『のべおくりのぎ』のまねか

土葬が禁じられた昨今、それはただの古き伝統の踏襲でしかなかったけれども、明陀宗の中にはそれを儀式の一つと捉えて野辺送りの真似を行う家もあった。
誰もが俯き、同じ様に何かを唱えている。そして渦中の人間は、俺達が踏み荒らすこの冷たい土の中へ、骨と灰になって埋められるのだ。
ふと、形の良い木の葉と枝を一枚手に取り墓標の横に戻り土を掘った。時折小さな石が爪の間に入り指や掌が痛んだが気にならなかった。お椀位の穴が掘れるとやっと満足した。
中に木の葉を一枚入れて今度は土をかける。綺麗にこんもりとした土の山ができたら最後に棒を立てた。

死んだ葉の墓ができた。

達成感に大きく息を吐くと、泥だらけの手を叩き、服で擦り落として家路についた。
家に着いたその後の事はあまり憶えていない。手を洗えとか探したとか、何故いきなり何処かへ行ったのかとか、多分そんな事を云われたのだと思う。
ただ一つ慥かな記憶にあるのはその時の柔兄の顔だった。柔兄だけは俺に何の声も掛けず暗く目を伏せて俯いていた。それだけは憶えている。
最悪な災厄から、ある程度の復興と、滅んだ人を慮るその作業量は膨大で夏先迄かかった。
俺は時折大人の真似をして小さな墓を作った。中には野草や木の実、ビー玉や嫌いな食べ物を埋めた。



******



数年後の夏に弟が生まれた。
俺のお下がりの赤子の服を着て、矢張りお下がりの今時珍しい布おむつで、俺が昔使っていた蒲団に寝る猿の様なややこ。
笑う家族に釣られて笑った。金造ももうお兄ちゃんやで。等と云われる度に「廉造、兄ちゃんやで」と胸を張ってみせた。
家族の笑顔に胸が迫る思いもあったが、それと裏腹に何か靄がかった気持ちもあった。しかしその時はただ家族に褒められるのが嬉しくて矢張り胸を張ってみせた。

「廉造たら泣かんくてなぁ。ほんま肝が冷えたわ」
「廉造、お母らが泣かせたん?なして?」
「ややこはな、ずっとお母の躰を借りとったから一人じゃ呼吸できへんの。泣かんとあかんねん」
「ふうん?泣かんとどないなるん?」
「息できんくて、死んでまう」

―――ひどい

ただ、そう思った。
廉造は生きたいと思って生まれてきたのか。兎に角生まれた命を無駄にしない為に無理矢理泣かされたのか。そして泣かないと生きられないのか。
何故か涙が出てきて嗚咽を漏らしたら、おかしそうに父が笑った。

「金造や柔造も泣きながら生まれてきたんやぞ。生きたい、生きたい。てな」

その言葉に俺は更に泣いた。面白そうな物を見るように微笑む姉と穏やかに笑う柔兄達を尻目に俺は只管泣いた。
生きたい?―――俺はそんな事は望んで生まれてきていない。ただ為すべくして生まれてきただけだ。勝手に理由を付けてほしくなかった。
泣いた理由は唯単に、理不尽だと思ったその感情を、言葉にできる能力や語彙がまだ自分自身になかっただけだ。
別に俺は死を望んだ訳ではない。生まれてきて直ぐ俺が如何思うか、そんな事は本人にも判らない事だろうに、その理由を後付けされるのが嫌だっただけだ。
廉造はすくすくと愛らしく育った。欲目もあるかもしれないが、実際、幼い廉造は愛らしかったと思う。こうして俺は兄と弟の両方を手にした。
時に柔兄や姉から構われない嫉妬で廉造に八つ当たりをして泣かせたと思えば、兄らしく振舞って縋り付いて来る小さな手を愛しく感じた。
どちらかと云えば飴より鞭、少々暴力が過ぎた気もするが、そもそも我が家はお父も柔兄も血の気が多く短気で直ぐ手が出る。
頭の良し悪しは兎も角、均せば"普通の兄"だと今でも思う。



******



廉造が5歳を迎えた頃だっただろうか。学校が早く終わり、家の仕事も無い時、俺は相変わらず稀ではあるが、一人で墓を作る真似事で暇を潰していた。
土を掘り、物を埋め、土を掛けて棒を刺す。手を合わせて憶えた経の一部を唱える。何となく云いようの無い後ろめたさはあり、隠れてその"弔いごっこ"をしていた。

「……金兄、なにしてはるん?」
「……なしてここにおんねん、廉造」
「坊も子猫さんもいそがしゆうから、金兄にあそんでもらお思うて、ついてきたん……」

よく知る高い声に思わず振り向く。またも学校が終わった黄昏時、特に用もなかった俺は一度帰宅した後スコップを片手に家を出た。久々に墓を作ろうと思い、いつもの場所へと森に入った所だった。
木の陰からもじもじと、恥ずかしいのか後ろめたいのか、怒られた時みたいな情けない顔で俺を伺っている廉造がいた。

「ほんましゃあないな。柔兄には内緒やで?」
「おん」
「墓作ってんねん」
「おはか?」
「ついてき」

自分だけの秘密の場所に廉造の手を引いて連れ森の奥へと連れて行く。奥に行くにつれ暗くなる景色に廉造は少し怯えている様だった。
幼いと云う以前に、そもそも廉造は虫が苦手である。故に森の奥は尚更怖いのだろう。

「わあ……ちっちゃいお山がいっぱいやぁ」
「全部兄ちゃんが作ったんやで」
「金兄すごいわぁ!」
「ここだけやないで。もっともっと作ってあるんやで?」
「ほんまに?」

大きな瞳を輝かせて俺を見る廉造に気分がよくなる。
もっと――昔の小さな"墓"は風雨に曝され朽ちた物が多かった。新しく作ったこの場にあるのは十数個の小さな丘陵だ。

「廉造もやりたいか?」
「おん!!」

元気な返事に「なら見とき」と俺は云い、スコップで適当に大きめのボール位の穴を掘ると、そこらにあった乾涸びた蚯蚓の屍骸を穴に放り込んだ。
廉造は蚯蚓の屍骸が怖かったらしく、俺の後ろに隠れてその後の作業を泣きそうな目で見ていた。
蚯蚓の屍骸の上に手で避けた土を掛けていくと少しこんもりとした山が出来た。山にするに足りない分は別の場所からまたスコップで掘って上に掛けた。
丁度良い位の長さの木の枝を探している間、廉造は不思議そうに山を触って固めていた。枝を拾って戻り、まだ余り固くするなと注意をすると、廉造は申し訳無さそうに手を引っ込めた。

「あまり固いと枝が刺さりにくいねん」
「かんにん……やけど、これ何のためのおはかなん?」
「せやなぁ。ほな、これはこの乾涸びたミミズの死体のお墓や。これで"弔った"で。こないすればこのミミズも浄土に行けるんやろ」
「とむらった?」

棒を山の上に刺し手に付いた土を叩いて軽く落とすと墓の傍に座り込む。廉造も真似して俺の横に座った。

「おれが廉造くらいちっちゃいころな。毎日いっぱい葬式があったんや」
「おん。"あおいよる"、やね」
「せや。でなぁ、大人は葬式が好きなんやなぁて思うて、簡単に真似してみたん。あんな面倒なもんせんでもこんだけでええやん」
「……おとなはおそうしきがすきなん?」
「あ?そうやろ?やて、ほんまめっちゃ死体あったんやで?一人一人やるの面倒やん。まとめて焼いて埋めてまえばええやん」

不思議そうに訊く廉造に俺は詰まらなそうに笑って答えた。

「どうせもう死んどるんやし」

廉造はきょとんとした目をした後、大きく息を吐き出して「せやねぇ。しんじゃっとるもんねぇ」と穏やかににっこりと笑って答えた。
そして疲れが少し取れた所で、今度は手を合わせ、或る程度もう覚えた読経から『枕経』なるものを唱えた。廉造も真似をしてたどたどしく同じ様に手を合わせて唱えていた。
俺が経を止めると廉造も止めた。これで弔いは終わりだと云うと、廉造は俺もやっていいかと態々訊いてきた。「好きにせえ」と云うとスコップを片手に近くに茶碗位の穴を掘り始めた。
自分以外の人間が墓を作るのを見るのは初めてだった。だから廉造の手際が悪いと思いつつも興味が湧き、廉造の作業をただじっと見ていた。
小さな硝子の破片を見つけてきてそれを穴の中に入れた。幼い手で土を掬い埋めていく。申し訳ない程度の木の枝を刺して、たどたどしい経を読んだ。
この遊びを始めたばかりのあの頃の自分の様だった。丁寧に土を丸く固める廉造のその作業を他人事の様にぼんやりと見ていたが、気付くと外はもう黄昏時に入っていた。

「廉造、帰るで。お父や柔兄に叱られるわ」

スコップを片手に立ち上がって歩き出すと、廉造も「おん」と応えて慌てて俺の後をついてきた。
帰り道、泥だらけの手であそこの土は固いだとか、穴を掘るのは面白かっただとか、晩飯は何だろうかとか、二人でそう云う他愛もない話をしながら歩いていたが、ふと廉造が伺うように訊いてきた。

「なあなあ、金兄。あのがらすも"じょうど"に行けるん?」
「あーせやなぁ……行けるんちゃう?まあ、生き物の方がええやろけど。ガラスに心あらへんし」

ふと廉造が突いた真理に俺は呻いた。
慥かに硝子の破片やビー玉やメンコは生物ではない。なら生き物に限定するべきであろう。
立ち止まり後ろを振り向くと、咄嗟の事に反応が出来なかった廉造が俺にぶつかり痛いと文句を云ってきた。俺はその批難を無視して話を進める。

「廉造、お前もこれから墓作りしたいんか?」
「ん?金兄はするんやろ?ならおれもする」
「ほな、次からは埋めるんは生き物だけな。お前虫はダメやろ。葉っぱや木の実は生き物やから、そないな死んでそうなの探し」
「ん…ん?おん……?」
「ええか。みんなには内緒やで。俺らだけの秘密や」
「ひみつ、やね」

頷く相手にそう告げると、二人だけの秘密が余程嬉しかったのか廉造はぱあっと笑顔になった。その顔に俺は満足しつつ二人で帰路へとついた。
夕焼けが赤かった。温かい廉造の手を握りながら、血はこんなに赤くないと思うのと同時に、火葬され朱に染まった骨をふと思い出した。
しかし憶えているのは斑に赤かったと云う大雑把な事実だけで、あの時のあの骨の精細な色の記憶は、最早脳裏から消え去っていた。



そして俺達は秘密基地でも作るかのように、感慨も何もなく沢山の墓を掘った。夏の終わりには多くの蝉の屍骸を拾い、虫嫌いな廉造は何度も泣いた。
落ちた柿を、叩き殺した蚊を、毒団子に殺された鼠を、野菜を、果物を、命が果てた"物"を。大きさを考え、無心に穴を掘り、偶に喧嘩したり笑い合ったりしつつ幾つも埋めた。そして最後にはまるで厳かそうに拙い経を唱えた。
勿論これとは違う、所謂もっと一般的な遊びも、明陀の人間として必要な習いも多くしていた。でもふと思い出してはその遊びをしたくなるのだ。熱は冷めるがまたぶり返す。遊びなんて云うものは結局そう云うものなのだろう。
俺が「行くで」と、それだけ廉造に云うと、それを合図に廉造も「おん」と笑顔で応えた。最早これが合言葉みたいなものである位には俺達の日常に浸透していた。

「あんな…金兄。おひるの、おさかなさんな、おとしてもうてん……」
「あー…?ほんま、どんくさいやっちゃなぁ」
「やから……おさかなさん、とむらったげよ?イキモノなんやろ?」
「面倒くさー……お前、柔兄に魚落としたんバレるんが怖いんやろ、廉造」

縁側に転がって昼寝をしていた俺に人懐っこく頼む廉造。廉造はこう云う風につっけんどんにすると直ぐに泣きそうな顔になる。
欠伸を噛殺して暫くその顔を眺めてみた。どんどん明るい茶の瞳が涙で潤んでいくのを見てから背伸びをして起き上がった。

「行くで」

そうぶっきらぼうに廉造に云って立ち上がると、廉造は暫く間を置いて、目を擦ると「おんっ」と笑顔に変わり抱き付いてきた。

「邪魔や廉造。蹴るで?」
「かんにん…金兄、まいどひどいわ……」

それでも廉造の片手は俺の手を握り締め、もう片手には紙袋に入れた焼き魚を手に、俺の歩調に合わせる様に後ろから小走りで付いてきた。
後はいつも通りだ。スコップを持ち今墓を作っている区域へと向かう。
そう、後はいつも通りだ。



土を掘って、

屍骸を置いて、

埋めて、

枝を立てて、

経を読んで、

後は、



―――満足するだけだ。




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(ぐだぐだ続きます)





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