「あれ、」

志摩が足を止め、ふと遠くに居る人物の姿に意識を向けた。あの独特な帽子を被ってるのは学園の理事長でもあるメフィスト・フェレスの姿である。学園の理事長としては"ヨハン・ファウスト五世"の名でも通っている。何故名を使い分ける必要があるのかは判らないが、塾生として本名を知っている分ややこしく感じる。

「あの人、あんな所で何してん…」
「おーい、早く行かないとまた雪男に怒られるぞー」
「あ、ちょお待って!奥村君。今行く…!」

燐の声にハッとし、踵を返して足早にその場を去る。何となく気になりふと一度だけ振り返ると、目元深くまで帽子を被り口元に笑みを浮かべたメフィストの姿が目に入り、ぶるぶると首を振って何も見んかった事にしよと燐と二人駆け足で塾へ急いだ。

「…おやおや」

シルクハットを被りなおし、「驚かせてしまいましたかねぇ」と目を細めてくすくすとメフィストは笑った。





 





「よっしゃ、ギリギリセーフ!」
「セーフじゃないですよ兄さん…。もっと余裕を持って行動して下さい」

全く、と溜息を吐いて燐の後ろに苦笑いしている志摩を見つけ思わず雪男は眉間を抑えた。

「す、すんまへん…」
「…いえ、次から気をつけて。…兄さんはもっと責任を……って兄さん! 訊いてるんですか!?」
「んあ? あー訊いてる訊いてる。次から気ぃつけるって。全くお前は一々一々細けぇ事に…」
「……何ですか?」
「…なんでもない」

ふい、とそっぽを向いてむうと膨れる燐に雪男はまるで弟のようだと内心溜息を吐きながら思った。そんな二人のやり取りに志摩は面白そうにくすくす笑いながら仲ええなぁ、なんて、椅子に座ってぼんやりと天井を仰いで思う。
ふと、志摩は先ほどの光景を思い出す。
――何してたんやろ、あの人…
あの後急いで学園に来たから今理事長は不在の筈…やな? と志摩は机に頬杖をついて何となく思う。

「…君。…志摩君?」
「…? え、あ、はい!?」
「如何したんですか?」

雪男が心配そうに尋ねてきたのに対して、志摩は苦笑混じりに「何でもないんや」と返した。

「でも…何だか具合悪そうですよ? 保健室で熱だけでも測って来たら如何ですか?」
「あー…じゃあ、そうしますわ。すんまへん」

いいえ、と笑う雪男に志摩も笑って返した。

「じゃあ俺が保健室まで案内してや「小学生ですか。怪我やふらふらしている状態なら兎も角、兄さんは単にサボりたいだけでしょう。駄目です」

やるよ、と燐が言う前に雪男が言葉を遮って言った。

「一人で行けるて」

二人の会話にくすくす笑いながら、そう返して、教室を後にして保健室へと向かう。そんなに具合悪そうに見えたんかなぁ、と首を傾げながら頭を掻く。ふと向かう途中でさっき思ってた事を思い出した。嗚呼、今学園長は学園から不在なのだろうかと。

「……いや、別にどうでもええやん」

あの人が今おってもおらんでもどうでもええやんか、頭をぽりぽりと掻きながら思って保健室に着いてそのドアを開ける。

「失礼しますー」
「おや?」
「え」

何故。
一瞬、思考が停止した。
まだ学園には戻って来ていないと思っていた。ならばあれから結構時間が経ったのかと頭の隅で思う。

「学園長、何故保健室に…」
「ちょっと野暮用でして。そういう君は如何して此処に?何処か具合が悪いのかな? 嗚呼、もしやサボり? イイですねサボり!歓迎しますよ!」

ばっと両腕を広げられて堂々とサボり良いですねぇ!……なんて言われても逆に困るんやけどと志摩は苦笑いを浮かべながら思った。

「ちゃいます。ちょっと熱を測りに来たんです」
「熱? ああ、そうなんですか」

つまらない、と言いたげに興味を失せて声色を変える相手に「何でこのお人"学園長"なんてものやってられるんやろ…」と内心思った。
棚から体温計をとり熱を測る。

「………」
「………」
「………」
「………」
「……、あの」
「ん? 何ですか?」
「…いや、…理事長、まだ用事終わってへんのですか?」
「ええ」

そうなんですか、と返し、会話終了。
正直居た堪れない。

「……」
「……」

ピーッと音がし、体温計を取り出す。

「何度でした?」
「ええと、37丁度…ですね」
「ああ、少しだけありますね、少し休んで行きなさい。皆さんには後で私の方から言っておいてあげます」
「あ、すんません、有難う御座います…」

ベッドにのそりと上がって横になり、ぽすんと頭を枕の上に落とす。保健室のベッドに寝るんのなんて何時ぶりやろ、と保健室の天井を見ながら思う。何か視線を感じ其方に目をやればじぃ、とメフィストがやけに此方を見ていた事に気付く。

「あの…なんや、俺の顔なんかついてます?」
「ああいえ、そうじゃなく。こうしてみると、随分と幼い顔立ちをしているものだなと思ってしまって」
「はぁ…?」

子供扱いされてるのだろうかという事に多少ムッとするが、相手が相手なだけに遊んでるだけなのだろうと思う。それに加え熱があると認識してしまった為か、身体が少しダルい。相手にせずに寝てしまおう。
志摩はそう思ってもそりと布団を深めに被った。
「あの、それじゃ…少し寝ますわ」
「ええ、おやすみなさい」
静まり返る室内。何時も騒がしい所にいる所為か、こういう状況には慣れていない。早く寝てしまおうと思えば思う程、逆に目が冴えて来る。目だけ閉じて耳を澄ますとぱらぱらと、何か紙を捲る音が聞こえる。

――なんやろ、なんかの資料やろか?

仮にも学園の理事長である。見た目に反して忙しいのかもしれない。
ぱらぱらと紙を捲る音と何か小声で言っているメフィストの言葉が自然に耳に入って来る。

「おや、いけませんねぇ、盗み聞きですか? サボりは歓迎しますけど盗み聞きはあまり関心しませんよ」
「!?」

熱がある所為なのか、志摩はその気配に気付けなかった。
気付くとメフィストが愉しげに笑って志摩の眠るベッド側に居た。
「す、すんません…そういうつもりやなかったんですけど…」
ふい、と視線を逸らし罰が悪そうにもごもごとする。

「私が居ると眠れませんか?」

そんな風に言われ志摩は益々罰が悪そうにして謝る。
「や、そうやないんです……すんません」
じゃあ、とメフィストは目で笑って、

「きっと疲れたら人気なんて気にせず眠れますよ」
「え…」

何か言葉を返そうとしたら、その口は塞がれていた。

「―――ッ!?」

志摩は驚いて目を見開く。
自分の目に映るのは未だ瞳が笑っているメフィストの顔。そして唇に確かに感じる感触。
何をされてるか理解した途端、志摩はメフィストを突き飛ばした。

「な…ッ何すんや!?」

ぐい、と拳で口元を拭いながら志摩は保健室で叫んだ。これじゃあ女の子の反応やないか、と頭の隅で冷静な自分がいたが気にしてられない。
メフィストは突き飛ばされ暫く俯いていて表情が解らなかったが、志摩のその反応を見てくっ、と喉で笑った。

「…面白い」

低く、そう呟いたメフィストに志摩はぞわりと鳥肌が立った。



「ッ、アンタ…! 何でこないな、こと…!」

ぐい、とベッドに上がって来たメフィストを押し返しながら赤く染まった頬でキッと睨む。

「何故? そんなのしたいからしてるに決まってるじゃないですか。状況を見て把握して欲しいものですね」

押し返される手を掴み、頭の上に一つに纏めて片手で押さえ付け、不思議だと言わんばかりの声色に口調で返答が返って来て志摩は頭が混乱しそうだ。
ふふ、とメフィストは志摩の耳元に顔を近づけ小さく息で笑う。

「ッはな、…!」
「知っていますか?熱を下げるのにはね、汗を掻くのが一番効果的だそうですよ」

さっき読んでいた資料にそう書いてありました。と、目線で先ほどの紙に目をやる。
志摩はメフィストの視線の先の紙に目をやり、さっき聞こえた小声の内容は熱冷ましの内容ではなかった気がする。と思った。どんな内容だったのかはもう忘れてしまったけど、でも熱の事ではなかった気がすると。

「熱冷ましに協力してあげましょう」
「っや、要らん…っ!」
「そうつれない事を言わないで。今は私も暇なんですよ」

ね?と返され、口付けられる。

「んん…っ」

口付けている間に上着を脱がせ服を掴んで上に押しやった。はあ…っと口を離し、白い肌を見せている裸体に舌を這わせると、びくりとその身体が震えた。

「やめっ……ッ、アンタにこないな趣味あるなんて知らんかったわ…!」
「私は面白いものなら何でも好きなだけですよ」

そう笑って返し、ズボンの方に手をやり、下着ごと脱がす。

「――――ッ!」
「おや、嫌がる割にはちゃんと反応するんですねぇ? ああ、もしや既に奥村君や他の子と経験ありですか?」
「―――ッ、うる、さ…!」

かあっと赤くなって押さえ付けられた手を振り解こうとするが、解こうとすればするほど余計に力が加わる。
はっ、と愉しげにメフィストは嗤った。

「そうなんですね? だから嫌でもこんな反応してしまうんですねぇ、可哀想に。嗚呼でも、初めてじゃないなら、別に優しくしなくても良いって事ですよね?」

メフィストは喉で笑いながら勃起している志摩の陰部を掴んで面白そうに上下に擦る。

「うあっ、ん、んっ…やっ、やめ…っ!」
「ふふ、もうイきそうですねぇ、一度イッておきますか? いいですよ」

先端を指でぐりぐりと押し、下から撫であげる。

「ひ、あっ…や、ああああ…っ!」

背中が仰け反りメフィストの手の中で果てた。
くく、と愉しげにメフィストは笑って志摩の耳に噛み付いた。

「嗚呼、実にイイ声ですねぇ、これは面白い」

掌から零れ落ちる白い液体を舐めあげ、メフィストは笑った。
押さえてた手を離し、はあはあと肩で息をしている志摩の身体を抱えてぐるんとひっくり返し、仰向けで寝ていた状態からうつ伏せにさせて覆いかぶさった。
志摩は目を見開いて後ろに覆いかぶさっているメフィストを見た。

「な、何す、…っやめ、…っい、いやや…!」
「―――大丈夫ですよ、私なりに、加減はしてあげますから」

壊さない程度の加減ですがね――とメフィストは内心で笑い、腰を撫で臀部をまだ全く慣らしていないそこにズボンのチャックから出した硬く勃った陰茎を宛がう。

「待ち…っそんないきなり、入るわけ…!」
「初めてじゃないんでしょう? じゃあ入りますよ。まぁ多少切れはするかもですが…裂ける事は無いですよ」
ね? と何時も見せる笑顔で言われてゾッとした。
志摩が一瞬何も言わずに固まっている隙にメフィストはまだ慣らしてないそこに陰茎をズッと押し入れた。

「ッい、たあ…! や、入れんで…! やぁや…!」
「―――…ふふ、」

ずず、と奥に入れ突き上げる。

「あ…ッあ、…っ! 苦し…!」

ぎゅう、と布団を掴み圧迫感に歯を食いしばる。

「――…っ…ほうら、入りましたよ?」
「や、抜い…っ苦し、い…!」
「大丈夫でしょう」

血も出ていない。裂けてる様子もない。これなら大丈夫だろうとメフィストは思った。 単に、精神的な問題なだけで。
汗で纏わりつく髪を鬱陶しげに払い、腰を動かした。

「っや、動か…でぇ…っ」
「無理なお願いです、ね…!」
「ああああ…っ!」

ああ流石に少し切れたかもしれないな、と白いシーツに染みる赤い液体に気付いたメフィストはそう思ったが今更止める気は無い。志摩の腰を掴み、遠慮なく、容赦なく打ち込んでいく。

「はっ、あっ…り、りじちょ…っ!」
「…ッ、ああ、イキたいんですか?良いですよ。お好きなだけイくといい」

流石に余裕がなさそうに笑って返し、一度最奥をずんと突いた。

「ふ、…っあああ…ッ!」
「……ッ」

志摩がイッた其の後僅差でメフィストも志摩の中に精を放った。
何度もイかされ肩で息をしている志摩に口付けて―――嗤った。
口元に笑みを浮かべ、腕を引いて奥まで入れるとメフィストは身体を動かし入れたままベッドの上に座った。
メフィストの陰茎がより深く志摩の体内へと入り込む。

「―――…あ…ッ…!」
「さっきよりかは滑りはよくなってるでしょうから、もう痛くはないでしょう」

そう言って頬に手を添え、口を開けさせ舌を捻じ込み口付ける。

「っんぅー…!」

涙を流しつつも口付けを享受する脆い子供。
熱っぽい志摩の瞳は苦痛と快楽を見出している。それをみてメフィストは満足そうに嗤った。




******




「っや、もう、いやあ…っ!」
「でもイきたいんでしょう? こんなになって…イッて良いと言ってるんですから、イケば良いじゃないですか」

何度も何度もイかされ、身体が過敏になっていて脳が麻痺しそうに苦しい。しかし逃げようにもメフィストのが奥深くまで入ってるから逃げようが無い。

「や、も、くるし…イきたく、な…っああああああっ!」
「ふふ…ねぇ、壊れてくれたら開放してさしあげても良いんですよ?」


何時までも自我なんか保ってないで。
私の元に堕ちてくれば良い。
小さな末の弟…奥村君は悪魔だというのに、君は彼の傍に居る。
ならいっそ、堕ちれば良いと思いませんか?

―――嗚呼、でも。

「嫌がる君をこうするのも、…また、一興…か」

その言葉を聞いて怯え涙ぐむ志摩にメフィストは口元を歪ませ嗤い、頭の後ろに手をやり深く口付けた。





君は私のかわいい玩具。
(面白いものは大好きですよ)





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白夜霧雨様より。
原稿修羅場中、えろい志摩受をくれと駄々を捏ねていたらくださりました。云ってみるものですね!文章校正と描写加筆は丸投げされましたけれど。折角なので多少加筆した以外は殆ど弄っていません。

Thank you for loving,





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