(高緑/緑間くんのきらきらの話/支部にあげていたもの)



 左手からゆっくりと離れたボールが、高い放物線を描いてゴールに飲み込まれる様は、呼吸のように安定していた。緑間真太郎は目を閉じる。厳しい練習を終えた後の、忙しない鼓動が内側から鼓膜を揺らすのを聞いた。それに重なる、規則的なドリブルの音を聞いた。
 彼は好悪に纏わる何かを、バスケットボールという競技について考えたことは殆どなかったけれど、それから生まれる音に耳を澄ませることに対しては少なくとも穏やかだった。ありとあらゆる規則性に生きる彼は、リズミカルなそれが決して嫌いではなかった。足の裏から伝わるそれ。体育館を満たす、響く、その音が鼓動と重なる瞬間、息を詰めることは癖だった。そうして長く息を吐き、閉じていた目を開けるのだ。
 残っているのが自分一人ならば決してすることのないその音は、しかしここ暫く、いつも緑間の背後にある。

「……何だ?」

 規則的で心地良い音が不意に止み、バッシュが体育館の固い床を踏みしめる高い音が近付くのを聞きながら、眉を顰めて緑間は尋ねた。すぐ後ろで伺うようにこちらを見上げながら、薄い笑みを張り付けている男を振り返る。目が合うと高尾は、人懐っこく笑みを深めてみせた。

「いや、改めてでけぇなぁって。何センチだっけ?」
「……195」
「うっはまじかよでけぇ!」

 何が笑えるのか、けらけらと声を上げる高尾に眉を顰める。ことある毎に騒がしい高尾の、その理由を考えては、面倒になることが多々あった。ただの一度も明瞭な敵意の浮かばなかった瞳の、更に奥で、秘密にしていたことを知ってからだ。敵意を尋ね、肯定されたあの一瞬の落胆は、違和感さえなく心の隅に痕跡を残している。あれは初めての感覚だった。衝撃は小さな凹凸として、彼の中に形を成していた。
 自然に横に並んだ高尾は、その背の差を確かめるように手のひらを頭の辺りに掲げて、それから遠くのゴールに目をやった。吊り上った目を惜しげもなく細め、ううん、と小さく唸って、それからまた緑間を見る。

「せっかくゴール近ぇのに、3P好きなんだな?」
「二点ずつと三点ずつなら、三点ずつの方がいいに決まっているのだよ」
「ぶふぉっ何それそーいう理由なの!? 真ちゃん最高!」

 オレ、真ちゃんのそーいうトコ好きだわ、と。いとも容易く紡がれた、綿に似た言葉を、たった六文字で両断したのは咄嗟のことだった。――うそをつくな。低くて良く通る声は確かに体育館の冷えた空気を揺らしたけれど、高尾は笑ったままだった。呆れたようにさえ見える顔で、小さく彼は首を傾げた。

「……オレは、嘘が嫌いなのだよ」

 かっわいいの。
 茶化すように高尾が肩を竦めるのを見て、緑間は険しい顔をした。眼鏡のブリッジを押し上げて、眼下の高尾を睨み付ける。その視線を真っ向から受け止めて、高尾は上目に微笑んだ。

「嘘じゃねぇよ」

 力強い言葉は、まるで直線だった。緑間のすぐ横を真っ直ぐに貫いていくような、それは綺麗な線だった。心臓の音が高く鳴る。言葉に貫かれでもしたのか、それは緑間の嫌う、何の脈絡もない、不規則なものだった。

「そりゃあまだ、手放しで好きではないぜ。我ながらよく引きずってるもんだなあって思っちゃうくらい」

 そんな素振りも見せない男は、本音かどうかも分からない言葉を、しかし真摯に重ねるものだから、緑間はただのひとつも言葉を挟めずに聞くしか出来ない。頬を伝う冷えた汗を手の甲で拭うと、それきりじっと高尾のその目を見つめていた。
 足元に転がるボールの中のひとつを、不自然なほど丁寧な動作で拾い上げながら、高尾は直線を重ねていく。みどりましんたろう。拙く呼ばれたフルネームに瞬くよりも先に、高尾は破顔した。

「オマエは偏屈だけど真っ直ぐで、いちいち予想より斜め上のおもしろ行動しちゃうし、……何より努力家だ」

 至近距離から軽く放られたボールを両手で受け止めると、彼は少し、戸惑ったようにも見える表情を浮かべた。思案するように左右に泳いだ目線は、それでもすぐに緑間へと返ってくる。
 そうだな、それこそ、オレがオマエの唸るようなパスを出す頃には。
 ボールへと視線を落とした緑間に向けて流暢に紡がれる言葉は、いっそ耳当たりの良すぎて呆れるようなものでさえあったが、一字一句が色づくようでもあった。その色とりどりの輝きが、ちかちかと瞬くのを、緑間は瞬きも満足に出来ないまま見ていたのだ。これは願望じゃなく、予言だと、念を押すような前置きがあって。

「そういう、小さな好ましいを繋ぎ合わせて、いつかオレはオマエを大好きになるよ」

 ――だいすき? 不釣り合いに幼い響きを持った言葉を繰り返せば、おう、と高尾は鷹揚に頷いた。「好き、の上は、だいすきだろ?」何かのポーズのように正しい有様ではにかむのを見て、緑間は両手のひらでボールを持ち直す。おもむろにシュートモーションに入った緑間に驚くこともなく、それの描く常通りの美しい放物線を最後まで見守った高尾は、「ナイッシュー!」と無邪気な歓声を上げた。

「なあ、瓢箪から駒を出すような、突拍子のない話だけどさあ」

 次のボールを拾い上げた格好で、もう一度、ゆっくりと繰り返されたまっさらな言葉は、今日の現代文の授業を引きずっているようだった。そのことわざの意味を間違えた者は、クラスには殆どいなかった。あのときも、高尾ははにかんだ顔で何故だか緑間を振り返って、恥ずかしいわ、と潜めた声で言ったのだった。
 その瞬間、緑間は少し不思議な感覚を味わった。教室で目の前に居た高尾と、いま此処に居る高尾が、同じ人間だという自覚が改めて出てきたのだ。当たり前のことだが、それは緑間にとって随分と意外なことのように思われた。
 言葉が、今度は柔らかな曲線として目の前に落ちてくるのを感じる。光る何がしかの残滓が、視界の端で明滅しているのが分かった。

 見たこともないそれは恐らく、紛うことなく彼の哲学だ。
 高尾和成の哲学は、緑間の初めて目にする色をしていた。




「高尾! なぁなぁ、今日の数学のさー」

 教室での彼は、いつも人に囲まれていた。
 何が楽しいのか、ことあるごとに半身で緑間を振りかえる高尾に集まってくるクラスメイト達は、それを最初こそ不思議がる素振りはあったが、ひと月もすればそういうものだと思うようだった。高尾のついでのように緑間に話しかける者さえあった。その理由は、緑間にも分かっている。

「あっこの公式の応用真ちゃん得意だぜー! な、真ちゃん?」
「……いちいちオレに話を振るのは止めるのだよ」
「マジかよ! 緑間頭いいもんなーちょっと教えてくれよ!」

 何に気を遣っているのか、高尾は緑間を話に組み込むことが多かった。さも当然のようなその一連の流れは、誰にでもそんな錯覚を齎すようで、そんなところでも器用なのかといっそ感心さえする。
 そうして緑間が不機嫌になるのを見てさえ、高尾は笑うのだ。
 緑間の机に肘を置き、頬杖を付きながら、少し困ったように笑ってみせる。な、な、と無害そうに掛けられる声。

「そんな拗ねた顔すんなってー」
「孤立を気の毒がっているのか知らないが、良い迷惑なのだよ」
「気の毒がるとかそんなんじゃねーよ? 緑間が迷惑がってるのも知ってるから申し訳ねーなーとも思うけど」

 申し訳なさの欠片も感じ取れない表情のくせに、そんなことを言う。人の感情の機微に決して敏感でもない緑間にも分かる、それは愉快がる表情だった。
 横を向いたまま、椅子からだらしなく伸ばした足を動かしながら、高尾は少し考え込む素振りを見せた。そうだなあ、と。

「オマエの面白さを、オレが勝手に広めたいだけ」
「……オレの何がそんなに愉快だと言うのだよ」
「今日のラッキーアイテムって扇子だろ? 和風アイテム似合うなー」
「答えろ、高尾」
「そーいうとこなのだよ」

 頬杖を崩して、緑間を仰ぎ見ながら高尾が低くした声で言う。まさか声真似のつもりか。苛立たしげに眼鏡のブリッジを押し上げた緑間を見て、高尾が声を上げて笑った。朗らかな笑顔だった。
 チャイムが鳴ればさっさと背を向け、だるそうに筆記具を取り出す背中に、思うところなどあまりない筈なのだ。それなのに緑間は思い出す。

『――オマエは偏屈だけど真っ直ぐで、――』

 周りに人を置く話術。明るい笑顔。適度な距離感。嫌みのない気遣い。垣間見せる、曲げられないこだわり。挙げていけばキリのない、人間として優れているといえるもの、その全てを持った高尾の、正面からの賛美の言葉を繰り返し思い出していた。そういう機会が増えた。

『小さな好ましいを繋ぎ合わせて、いつかオレは、』

 オレは、オマエを。
 反芻する言葉に逸る鼓動、その高揚感は、名状し難い。だいすき。その、幼い響きを持ったたった四文字が、緑間はいたく気に入ったのだ。ただそれだけだった。




 それだけを抱えて、考え続けていたのだ。
 練習を終え外に出ると、空はもう真っ暗で、誰も彼も同じような声を上げた。随分と騒がしい人の波から一歩離れると、隣には自然と高尾がついてきていた。自販機行こうぜ自販機、と気だるげに腕を引かれ、そのまま連れ出されても文句のひとつも言えなかった。自覚よりも体力を持っていかれているらしい。

「日ぃ暮れんの遅いはずなのにもう真っ暗じゃんね!」

 腕を伸ばしながら高尾が騒がしい声を上げても、息を吐いて答えるしか出来なかった。そんな緑間に高尾は笑う。「おしるこ?」受け取った硬貨を片手に尋ねる高尾に、短く頷いた。ベンチに座った緑間に手渡された細長い缶へと返した小さな言葉に、「真ちゃんマジ今日お疲れな」と驚いた声を出され、緑間は眉を顰める。

「礼ぐらい言えるのだよ」
「ふは、普段は割と言えてねーよー? ……ねー真ちゃん、このタイミングで飲む冷たいおしるこって美味いの」
「愚問だな」
「……そっか……んー、オレ何飲もう」

 腕を組んで大袈裟に唸っていた高尾は、えいっと思い切った声と共に勢いよく自販機のボタンを押した。無難なスポーツドリンクの缶を片手に、緑間の腰掛けた隣に座り込んで、遠慮のない呻き声を上げる。

「薄めずに飲むスポーツドリンクは糖分が濃すぎるらしいぞ」
「ごめんねおしるこ飲んでるオマエには言われたくないわ……!」
「鞄の中にきちんと調節済みのものの入った水筒があるのだよ」
「……敢えて言及するのも野暮だけど、真ちゃんって地味に恥ずかしいよな……」「は?」

 重ねるのは取り留めもない話だ。ただでさえ切り上げるタイミングの難しい類だったが、緑間は律儀に短くとも言葉を返していった。大した理由もなく潜めた二つの声が、冷たいコンクリートに吸いこまれる感覚は静謐さを匂わせて、何処となく気恥かしかった。見上げた夜空が濃い青をしているだとか、星が多い気がするだとか、後々思い出しても何の実りもない言葉の数々は、しかし際限がなかった。星座へと変わった話題が、自然と占いのことになり、最終的には緑間自身のことになる。高尾は酷く楽しげだった。

「真ちゃんってほんと、面白いよなあ。何考えてるか分かんねーけど、そこもまた?」
「オマエには分かりにくいなどと言われたくないのだよ」
「えー、オレってすげー分かりやすい男だと思うぜ!」

 とっくに空になった缶を捨てるために立ちあがることもせず、高尾が不満げに言う。緑間は未だ中身の残った紫色の缶を指でなぞりながら、首を左右に振った。何を馬鹿なことを、のニュアンスを綺麗に汲んだらしい彼が、いかにも愉快そうに笑ったから、溜め息は深くなる。
 ああ、でも、あれだよなあ。

「知りたいって思って、お互いに分かんないとこ、じわじわ知っていくのも一興ってヤツだよな?」

 自分で言っておきながら、照れくさそうに目を逸らした。視線は宙を泳いでいる。それでも笑っているのだから、相も変わらず理解に苦しむのだ。動かない緑間の表情に何を思ったのか、高尾は横目にその顔を見ながら、不服げに唇を尖らせた。わざとらしい大袈裟な表情の、本当に上手い男だった。

「……知りきれなさそう」

 緑間のそれよりも溜め息の多量に含まれたその言葉の、何かしらが意外に思われて、緑間は驚く。
 何を、と低く呟いた緑間のことを、高尾は丸く見開いた目で見上げてきた。その目を真っ直ぐに見返す。心中で、ずっと巣食うあの鮮やかさを振り翳してさえいた。

「いつかオマエは、瓢箪から駒を出すのだろう?」

 ならばいつか嫌でも分かっていくのだよ。緑間のその、一片の疑いもない言葉に高尾は、今度は肩を震わせながら背を丸めた。口元を覆う手のひらが何の意味も持たないくらい、高尾の笑いは顔全体でなされる、あからさまなものだった。「なん、それ、ずっと覚えてたの?」「オマエがおかしな言い回しをしたからなのだよ」「マジもうツンデレなんだからー!」下から緑間の顔を覗き込むようにしながら、彼には解せない理由で高尾がはにかむ。僅かに頬を紅潮させながら、その顔ははしゃぐ子供にも似ていた。覚えていたのか、そっかあ、うはは、と噛み締めるように繰り返す姿を、奇怪なものを見る目で緑間は見る。覚えていないと思っていたのかと、拗ねたいような心もあった。

「な、オレ、もうだいぶ好きだぜ、真ちゃんのこと!」
「……ふん。そんな中途半端な言葉などいらないのだよ」
「何それどんだけだよ……!!」

 今度は腹を抱えて笑い出した高尾が、その言葉を正しく解していないように見えて、緑間は眉を顰める。「なあ、真ちゃんは?」とも、高尾は聞き返さなかった。彼の言葉の深度を測れないことをもどかしく思う。何時だってそうだ。
 欲しいのは、あの四文字が、高尾の口から真摯に紡がれる瞬間なのだった。まだ尚早らしい。それが訪れることは確信だった。だって彼がそう言った。だから今か今かと緑間は待っているのだ。心臓の奥で、例えようもなく根を張っているものがある。不確定なものは好きではなかったが、其処にあるものは、どうやら捨てるには惜しいものだった。




 何時からだったのか、そんなことを考えるのは野暮だった。
 ――心臓が弾む。常よりはずっと早い拍動を、不快には思わなかった。上手く吸えない息、そこから増す高揚感。ゴールをくぐるボールの軌跡を目で追うその肩を、力いっぱいに叩く腕があって、緑間はひどく面食らう。振り返った先の眩さを、何と名状することが出来ただろうか。目が眩むようだった。歓声に呑まれる瞬間、心臓はいっそ心臓でさえなくなる。きらきらの先で、四つの顔は思い思いの顔をしている。目の回る光度を翳す世界と、忙しない心臓、足りない酸素、そのすべてが足元の影にさえ色を付けるのを感じた。一番の眩しさを保つ存在が、呆けた緑間の背を押す。そこから緩む、頬のこと。すべてに名前を付けるとしたら、答えはたったひとつだった。ずっと根ざしていたあの哲学が、その答えだった。ようやくすべてに合点がいって、緑間は笑う。

 わらう。




 分かってしまえば、待ちきれなくなった。


「高尾、」

 ギイギイと耳に障る、錆びた金属と木の擦れて軋む音さえ規則的だ。
 ここ最近読み続けている文庫本は中盤に差し掛かり、そろそろ盛り上がり始めるだろう頃合いだった。心地いい穏やかな沈黙を破った、珍しい緑間からの呼びかけに、高尾は少し上機嫌な声で答えた。

「んー?」
「瓢箪から駒は、まだ出そうにないのか?」
「……なぁに、気になるの真ちゃん」
「ああ」

 臆面もなく頷いた瞬間、高尾が驚きに息を詰まらせたのが分かった。
 想像よりもずっと顕著な反応に、緑間は上機嫌に繰り返した。生ぬるい風は、土のにおいを纏っている。横目に見た高尾の背中に、ふっと、息を吐いた。ただでさえ遅かった自転車の速度は、安定性を欠いてしまっている。

「ああ、……とても、気になる」

 言いながら、鼻先を文庫本に埋めた。目を閉じれば、鼓動の音だ。たかお。零れるように呼べば、高尾が突然ブレーキを握り締めた。タイヤの発する甲高い音と、急停車の振動。つんのめる体に、何なのだよ、と放ろうとした言葉は、自転車を投げ出してリヤカーの縁に手をついた高尾の真剣な目に行き場を失った。なあ、それ。珍しく慌てたような高尾が、身を乗り出して緑間の右手首に触れた。

「出てないわけねぇじゃん。見りゃ分かるっしょ、真ちゃん、」

 口元から離される文庫本に、心許なさを感じる。左手には触れないのは、きっと彼の気遣いだった。そういうところが律儀な男だ。こんな状況でさえ感心する。強く掴まれた右手首が、そこから高尾に伝えるだろう緑間の鼓動がいつもより早いことに、比較対象を持たない彼は気づくだろうか。それだけが少し気がかりだった。伝えたいことを、何時だって言葉にせずとも汲み取ってみせるのが高尾という男だけれど、こればかりは勝手には知られたくはなかった。そのための言葉を緑間は、彼にしては長いこと、心臓の底に隠しているのだ。
 高尾が短く呻いた。低く掠れた、息のし辛そうな呻きだった。

「もう嘘みたいなんだぜ、いや言葉の意味としては合ってるんだけど、駒出すつもりが島出ちゃったーみたいな、もう、さあ、とっくの昔なのに、何でそんな」
「意味が分からないのだよ」
「そこは分かってくれよ!」

 目一杯の声で叫ぶようにしながら、「ああくそ真ちゃんらしい」と呆れたようで、かつ安堵したように落とされた声が、緑間の満足感を緩くつつく。右手首を掴んだままの手に、同じように左手でそっと触れると、高尾は短く息を詰まらせ、肩を揺らした。くそ、と。また短く、あまり綺麗ではない文字を落として、長く息を吸った。

「オレ、……オマエがその、す、きなんだけど、まだ分かんねえの?」

 いつもこちらを真っ直ぐ見る、高尾の強い目が揺れている。何だ、と呟いて、それに見入っていた緑間は、拍子抜けしたような気持ちで小さく笑った。
 高尾の真剣な表情が崩れて、堪えきれずに笑い出して道路に蹲るまで、あと数十秒と掛からない。


 ――何だ、

「だいすき、ではないのか?」




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