(兎虎のつもりがリバっぽい/タイトル通りのお話/頭のおかしい2人リトライ)




「僕のこと、食べてくれてもいいんですよ。」

 明日の予定を話すような調子で、相変わらずバニーちゃんは脈絡のないことを言う。俺に覆い被さるような格好のまま、指を指と絡めて、ベッドの上で戯れに交わすには何と言うか、少しいやらしい言葉だ。

「何だよバニーちゃん、そういうお誘い?」
「別にそれもいいですけど、今はちゃんとしたカニバリズムのお話ですよ。」

 おかしそうにくすくす笑うバニーはとても可愛らしいけれど、やっぱり可笑しいことを言っている。ずっとぐにぐにと弄っていた俺の左の手のひらを、自分の頬に押し当てて、今にも溶けそうな笑い方をするのだった。「食べられるなら虎徹さんがいいですよ?」って笑うバニーちゃん、そりゃあ、おまえが万が一にも人に食べられなきゃならないってなったら、俺も食べてやりたいなあとは思うが。

「でも駄目だな、俺、血とか駄目だもん。」
「ああそういえばそうでしたね、」

 残念です、と息を吐くバニーちゃんの頬に添えられたままの手を俺からも押し付け直して、その白い頬の肉を歪めさせる。何が残念なんだか。あまり本気ではないだろうくせに、さも心底からの言葉のように言う。もし例え本気で、そうでないような振る舞いが演技だとしたって、最後まで押し通さないような気がするものだった。
 何だかなあ。何だかなあと思いつつ、それを言葉にしようと思ったことはない。バニーちゃん変ね、って、恐らく変な俺が言えたことじゃなかった。横になったバニーに向き直って、ふわふわしている、その少しくすんだ色味のある綺麗なブロンドを指の先で摘んで笑えば、バニーは美しく笑ってみせるのだ。透き通るようなアップルグリーンが、溶け出すように滲んで細められる様を見るのがとても好きだった。

「何でいきなり食べられたくなっちゃったんだ、バニー?」
「それも愛なら素敵かもしれないな、と。」
「今度は何に影響されちゃったんだかなあ……」
「そうしたらずっと一緒です、……です、ね?」

 いやいやどうかなあ、なんて軽い言葉に、それでも考え込むように口を噤んだバニーちゃんの髪を、ぐしゃぐしゃと乱してやる。いやでも愛なら何でもいいかな。もうよく分からないけど、たぶん。そんな日は一生来ないだろうから、俺は笑った。

「すきですよ虎徹さん、あいしてます、だいすきです。」
「何かさあ、俺がいつか、おまえに食べられちゃいそうな。」
「何です、それ?」

 ふにゃふにゃ笑うバニーちゃんの口元に指を持っていくと、軽く歯を立てられた。楽しそうで何よりだ。やっぱり可愛い。それから俺の薬指に光る銀色の傍に口付けて、あなたを形づくる全部が好きですよって笑うのだ。なあほんとうに、食べるんならおまえじゃねえの。最近の俺は、もうどうにもならずに笑うしか出来ないようなときは、大人しく従うようにしている。へらって、ゆるゆると戻らなさそうなだらしない顔で俺が笑うと、何でかバニーも笑うのだった。そういうのはすべて愛だろうと思っている。バニーちゃんが俺を全部好きだと言うように、あれもこれも形ばかりは美しい。俺の全部って言ったって、俺がすべてやれないことくらい、かわいい兎ちゃんは分かっているのだった。何だかなあって、いつだって言えない俺のことだって知りながら、花がこぼれるような柔い笑みで。

「……な、俺を食べたくなっても、指輪だけは残しといてくれよ。」
「僕は虎徹さんを食べませんよ、」

 だって愛してますから。そうやってふんわり滲む姿は、眩暈がするほど可愛らしい。くらくらするなあと俺は思う。やっぱりバニーは意味が分からないけど、幸せだからいいのかもしれなかった。愛ならばいいのかもしれなかった。

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