初めて差し出されたのは、花弁の少ない大振りな花だったのをよく覚えている。久しぶりに顔を合わせた友人は、心なしか青い顔をしていた。その逞しさは変わらぬ腕に抱えられた拙い花束は、見たことの無い花だったが、姿形は今でもはっきりと思い出せた。真昼の光には負けてしまいそうな、薄い白の花だった。誰かに良く似たような花だった。そうして、その時の友人は、酷く凪いだ眼をしていた。波一つ立たない水面のような眼だった。
 どうしてと尋ねた声がまるで、自分のものではないように頼りない響きをしていたのを、長曾我部は覚えている。今思えば、どうして尋ねたりしたのだったか。
「奴に、花は良く似合うから。」
 最初の理由は、確か、そういう類の言葉であった。
 囁くように言って、やはり男は笑った。長曾我部は、無二の友人がそんな風な――まるで手放しで水に沈んでいくような、無防備な不幸を振り翳して笑うのを、初めて見た。これもこんな風に笑うことがあるのかと驚きさえした。今思い返してこそだが、あれはきっと少なからず意図的で、同情を植え付けるのに最善だったのだろう。
 あれのせいで、長曾我部は今日まで幾度も、花を届け続けている。


指を折る。

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