細い糸で束ねられただけの素朴な花の数々を、渡されるがまま石田の部屋に届けるのは、決まって長曾我部の役目であった。
 特に理由はなく、ただ、最初がそうであったからそうなったという習慣の話だ。それはそう頻繁な話ではなかった。花を持った長曾我部が訪ねるとき、彼は必ず背筋を伸ばして座していた。言葉はなく、流れるような動作で花を細く青白い指が受け取る。誰からのものだと言わなくとも、分かっているようだった。
 ――多分、あまりすきじゃない色だろうが。
 確かにそう言って渡された小さな花々を、大して眺めることもなく握り締めた姿を、儚むにも似た気持ちで目を細める。長曾我部は自分が居ても居なくても、花の末路は変わらないのだと知っていた。どちらにせよ無惨にも畳に散るだけのことだ。分かっていながら、長曾我部はその全てを見ていようと思っていた。特に理由はなく、ただ、何かを刻み込むような所作のこと、まじまじと見詰めてばかりいた。


紐を解く。

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