花弁を噛むのは癖だろうか。
 決して美味い訳ではないだろうに、石田が白い花の花弁を徐に噛み千切った時、それを手渡した長曾我部は大層驚いた。思わず呆けたまま、美味いのかと尋ねてしまった程だ。美味い訳が無いだろう、と冷ややかな視線と共に一蹴されてしまったが、その臓腑の中に少なからず収められた花弁の行く末が長曾我部には酷く物寂しく思えて仕方が無かった。
 幾度かそれを眺めるうちに、食うことが目的ではなく、花を滅茶苦茶に千切ることさえ出来れば良いようだと気付いた。それでも、時折行き場のない何かごと呑み込むように、石田は花弁に牙を突き立てる。
 そうして決まって、食い潰された花弁の欠片と残された萼と茎とに囲まれて、彼は沈むように眠るのだ。石田は色の薄い男であったから、まるで鮮やかな花に色を盗られでもしたようにさえ見える有り様だった。幾らかの後、目を覚ました石田は、花だったものを捨てにいく。海に放っているのか、土にかえしているのか、そこまでは知らなかったけれど、長曾我部は尋ねることはしなかった。ただただ、夢想していただけだった。


花を喰う。

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