「若いとは素晴らしいことでありますなあ。」

 おまえまた何か変なこと考えているだろう。鼻歌混じりの我輩の言葉に、そんなことを言ったのは幼なじみの一人だった。もう一人はといえば、どことなく不安そうに我輩を見ている。それは一体どういう顔なのだろう。分からなかったから、とりあえず笑ってみせた。

「もし、端から見て手放しのハッピーエンドが存在するとしたら、そういうものはああいう若者に対する恩寵だと思うんであります。」
「……何を言いたいかはまぁ分かったが、それは職務放棄の新しい言い訳か?」
「失礼な!」

 何も全てあの快活で無垢な若者任せにしようというのではなくて、そう、例えば祈るような心地で。もしかしたら手に入るかもしれないハッピーエンドとやらを、ただただ期待しているのだ。


(例えば、正しさなど捨て去った、優しい未来の話をするならば!)


44.ワルツ
 これで長いこと消化していた44題はおしまいです。長いことかかりましたが、消化出来たのは見て下さる皆さんのおかげです。ありがとうございました!
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