言わなければならないと思って先輩に嫌いですよと告げたら、何て顔をしているのかと叱られた。寝不足だったからか、俺がそのときよほど険しい顔をしていたのかどちらかは分からない。何だかんだ発言は流された。それが割と勇気のいる行動だったのは、名前ならば耳慣れている、しかし虫酸が走る感情のせいだ。どうやら俺は先輩が好きなようだった。客観的に見た結果だ。おそらくは恋に分類されるだろうそれは、行動をいちいち制限する厄介なものである。人の自分に対する顔色ひとつで浮き沈みする感情なんて煩わしいだけだった。
 手を伸ばしたくなる衝動も、ざわつく心も、すべて煩わしくて堪らない。だから嫌いだと言っているのだ。それなのに。ひどい顔をしていると眉を寄せ、視線を合わせてくるそれだけで、泣きたくなるのも俺の理想を超える俺なのだった。
 まるで自分が、容易く取り留めもなく生きているみたいに、何かを望んでいると分かることが嫌だった。波風立たない静かな場所で好きなように生きていたいのだ。誰にも邪魔をされたくないのだ。誰かの存在をすべて肯定したがる俺なんて、そんなの、あるわけもないというのに!



19.テーゼ
 たまには両想いを書きたかったんだけど良く分からない。
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