ああ哀れまれているのだとふと諒解したときでさえ、クルルは驚くこともなかった。
 やさしくされるとき、自分は少なからずそのひとの下に位置づけられているのだろうとは思う。だから、いつかの昔、ひとは驚くほど自分にやさしくなかったのだろう。やさしくするのに理由が必要ではないなんて、クルルには一生理解出来ない理屈だ。思考は出来ても、話が違う。やさしくされるのは、あまり好きではなかった。

「ひねくれ者。」

 くちびるを尖らせて拗ねたように言うひとは、困った風に首を傾げた。やさしいってそういうはなしじゃないでありますよ。とても容易い言葉は耳に障らない、滑るような響きでもって、大層無害なのだった。

「たとえば、」
「うん?」
「隊長が、手放しに俺にやさしいとしても、」
「うんうん。」
「そんなひどい話、他にはないっスよ。」
「……ばかだなあ。」

 ああかわいそうにって、そういう気持ちでもいいから、このひとがとても好きだなんて。そんなひどいことが、あってたまるものか。



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