いつか正しく生きるために、なさねばならないことがあったとして。それをなすつもりは毛頭なかった。



「次から次へよくもまあ、ろくでもないこと思い付くでありますなあ。」
「だって退屈は人を殺すんすよ。」

 需要があるから作ったというのに、隊長はそうやって俺ばかりが悪いみたいに物を言う。どんな馬鹿げたもの下らないもの意味のないものだって、誰かさんたちが面白おかしく昇華させるものだから、俺は退屈に殺されないために作っているに過ぎないのだ。退屈は敵で、安寧は毒だった。そのくせ退屈で安寧なここ最近、誰も彼も生き生きとしている。

「楽しいなら楽しいって素直に言やーいいのに、まったく素直じゃないんだから……」

 呆れたようにそう言ってから、自分の言葉自体に向かって困った風に笑った。そういう容易げな表情の動きが、恐らくこの人の美点なのだろうと思う。
 嗚呼、ほんとうに。誰も彼も、いとも簡単に有り様を変えて、さもそれが幸福だとでもいうような顔をする!

「……幸せでも人って殺せるんすよ、隊長。」

 零れ落ちるままに言えば「ずいぶん刹那的なことを言うんでありますなあ、」だとか何とか、やけに気取った言い方をするものだから笑ってしまう。なるほど確かに、いつか賜るだろう正しさよりも、何がしかの絶頂にある今この瞬間、まるで時が止まるのを祈るみたいな、そういう話であるようだ。



40.リアル
 現に見る夢にも似ていた。

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