※時系列が有り得ない感じ


 言うことを聞きさえすれば良いというような態度と、むかしむかしに自分が惰性じみて流されるままだった大人の事情とか何とか、ずっと無関心だったそれらを、思いのほか嫌悪していることにふと気付いた。
 モニターの向こう側で、小さくて白いのがにこにこ笑っている。クルルが見ていることなんて知らないだろう、いつもより数割増しで一小隊の隊長らしからぬ緩みきった顔をして、ケロロも笑っている。敷かれた布団の上で手のひらを合わせたり、額をくっつけたり、抱き合ったり、思い思いにじゃれあう様は別に特別楽しいものではなかったけれど、クルルは何となく眺め続けていた。
 欠陥があるとはいえ、一応は生物兵器であるところの小さくて白いのは、何をどうするでもなく笑っている。少なくとも今は無害な子どもの顔をしている。しかしあれは本来危険なものである筈だった。生まれて育って眺めてきたあの星は、この真っ青な星ではやってはいけないことを当たり前のようにしてみせる。そうしてそれを、生まれて育って眺めてきた自分は、別段可笑しいとは思っていなかった。上書きされた倫理観を鵜呑みにするではなく、ほんとうに、気味が悪かったのだ。出来損なったあの白いのを、きっと色のない目たちが冷たく見下ろしていただろうことも分かっていたから、なおのこと。
 物事はすべて役に立つか否かで、その考えに反発するでもなく同調するでもなく、一理あるかもしれないなとあの星で、しかし同じくらいにどうしようもないことをしてきたクルルは、今さらのように吐き気がする。子どもみたいな顔で笑う大人が、すべて放り出すみたいにやさしい甘さをその頭上へ注ぐのを享受して、ドットキルルは笑っている。この世のきたないものなど知らないような無垢な子どもの顔で、ただただ手放しに笑っている。


 笑っている。



29.ヘテロノミー
 懲りずにまたマッシュ。時系列はもはやファンタジーの域。


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