いつかやってくるだろう終わりを前にして。 「一夜の夢でありますよ。」 パソコンを弄るクルルの背を見ていた我輩の口から、思考の中から溢れた言葉が転がり落ちた。我ながらびっくりしたから、つい寝転がりながら広げていた週刊誌を閉じてしまう。 「あー……何が?」 「んー、いろいろ?」 「ああ、全部っすか?」 パソコンから目線を外さず、それを拾い上げたクルルについつい笑った。律儀なことだ。本人に言ったら、きっとひどく嫌そうな顔をするだろう。 カタカタとキーボードを打つ音を聞きながら、ゆっくりとした瞬きを繰り返す。そう、ぜんぶぜんぶ。軽い調子で放った言葉が、さみしく床に落ちている。 「だって、そんなモノじゃない? 300年でありますよ。」 「だから一夜の夢、ねェ……随分感傷的じゃねーの、隊長?」 嘲るみたいに言う悲しみをどうにも掴み損ねて、上手い言葉が思い浮かばない。 緩やかに上滑りする時間の流れを、傍目から幸福と呼ぶことは知っていた。けれど、あるべき正しい姿を失って、これからどうやって生きていけるというのだろう。この星のうつくしさとやらを語るには野暮である。何故なら比較対象さえ持たない。――今まで、降り立った星のうつくしさに、目など向けたことがあっただろうか? 「こーんな我輩は、何時まで許されるんでありましょうなぁ?」 嗚呼これではまるで、許されたがっているような言い方だと、我ながら堪えられずに笑ってしまう。 9.ケアレス・ミス 寿命の長さはもっとちゃんと考えてみたい。 |