俺の幸福を知るべきだ。

 例えば世界に溢れる幸福は、この両手に溢れんばかりではありますが、そういうのを全部掻き分けてみると、思いの外些細で取るに足らない願いがそれらを支えていたりする。この世の幸福は、すべからくその、小さくて脆弱で、いつかは必ず崩れるものの上に成り立っていた。
 欲張りなこの腕を広げた時、囲える範囲の余りの小ささに、らしくもなく打ちひしがれてみたりして――

「さて、今日も何にも浮かばなかったでありますなあ。」
「そんなのでどうするんだ貴様……」
「今度こそはーってこないだ言ったばかりじゃないですかぁ?」
「まーた反故にすんのかよ隊長ォ?」
「いつものことでござる。」

 ひどいなあと笑いながら。
 いち言えばよん返ってくる、言葉のことばかりを。



20.トゥッティ

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