このゲーム面白そうだよ来春発売だって、とテーブルに広げた雑誌のカラーページを指差した冬樹殿に、それは待ち遠しいでありますなと余りに即座に返した自分に僅かながら驚いた。もうこれ以上の未来は期待すまいと誓ったのは、ついさっきのことである。
 残された期限の少なさに嘆いて、今度こそ今度こそと幾度目かの声明を、ほんの数時間で反故にする愚かさよ。
 これではまた皆を呆れさせてしまうでありますなあと、ふと頭によぎりはするのだ。しかし、生まれて生きた星よりかゆっくりと流れる時間を過ごす内に、毒されているとも知れないまま、この星を長い生涯の只のひとステップだったと踏みにじれる段階などはとうに過ぎてしまっていた。
 いつか振り返る思い出の中でさえ美しい日々を後少し後少しと、何時まで引き延ばし続けられるだろう。それは諦観にも似て、内側の奥の奥に巣くったまま、時折悪い夢になって。

 ――嗚呼。それでも。

「買ったら一緒にやろうね、軍曹。」

 今日もまた、笑顔と共に差し出された小指に己の小さなそれを躊躇いもなく絡めて、これが嘘になることなどないようにと、当たり前のように。



18.ツァイトガイスト
 小隊一人一人の5話完結で考えていた中編の、軍曹部分を改変。原形は最早ない。

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