雑多短文倉庫

2012/10/29 22:55
冬ですね(宗茂と元就)




「冬は老体には厳しすぎる。」
「貴方が真面目に言うと、そこはかとなく違和感がありますね。」
「宗茂が言ったらきっと似合うよ。」
「笑顔で言わないで下さい。」
「……寒いねえ。」
「……寒いですね。」
「餅が、食べたい季節だね。」
「寒くなくとも言ってますよね、それ。」
「……食べたいなあ。」
「俺が叱られるので駄目です。」


 縁側でぐでぐでしてほしい。


2012/10/29 22:49
ぐるぐるぐらぐら(青と黄/似てないけど似てる)




「たとえば美しい言葉ばかりを紡ぎ出したいときに、僕というものが邪魔でさえある。」
「……遠回りな厭世観の暴露か、自殺願望の発露か、どっちスか?」
「……冷たいことを言うんだね。」
「優しいだけの言葉が欲しいなら、他を当たりなァ。」
「それなのに何で君の言葉は美しいのかなあ。」
「アンタが美しくないから、美しいの基準が低いんじゃねーの。」
「ふふ、」

 優しくはない、優しくはない。目を閉じた。


2012/09/10 23:42
かれのじゅんすい(965/高←緑?)




 生き物の住めないという、限りなく純度の高い精製水の話を聞いたとき、オレは思わず前の席のおまえを見た。少し、ほんの少しだけ、おまえに似ているような気がしたのだ。懐が深いようでいて、愛想が良いようでいて、深度を晒さないおまえと、まっさらな水はきっと似ている。ほんとうに透明な水は、あるかなしかも分からないものだろうから。その水の中では生き物は生きられないという。電気分解の話から、どうしてそうも脱線したのだろう。しわがれた声を不思議に思いながらも、オレはおまえのことを考えていた。退屈げに頬杖をつく、その背を見ていた。おまえの、あるかないかも分からない水では、きっと呼吸など出来ないに違いない。それなのにオレは、いま、ひどくばかげたことを考えていたのだ。おまえに聞かせられるような話ではないな。

(彼の純粋と献身をしらない話。)


2012/09/03 00:40
あまえたさん!(K66/黄赤黄)




「せんぱい、……せーんぱい、せんぱいせんぱい、」
 肩口に後ろから頭を擦り付けながら、クルルは俺を呼ぶばかりでそれ以上は何も言わない。何だかよく分からないが、難しそうなことなので放っておいた。ひとしきりぎゅうぎゅうと纏わりついていたかと思えば、不意に離れたのでついに拗ねたのかと思えば、何故か満足げな顔をしている。意味が分からん。俺の表情を汲み取ったらしいクルルが、呆れたようかつ楽しげに笑った。
「先輩のそういうとこ、優しくて好きっすよ、俺。」
 珍しく大人しく素直なその言葉は、俺に対する説明だったのだろうが、しかしやはり意味が分からない。首を捻った俺に、堪らないとでも言うような笑声、ひとつ。


2012/09/01 00:43
たとえばきみの(965/高←緑)




 まず大体隣にあるがゆえにあまり見る機会のない、自分よりは小さな、しかし決して小柄ではない背を見詰めていた。視線を感じたのか振り返った顔は、不思議なほど笑顔だ。ともすればきつい印象だろう吊り目を細めて、口を開けて、なぁに、と軽い調子で声を上げて。立ち止まったオレを見れば、高尾も同じく立ち止まる。先輩たちはそんな高尾に相変わらずだなと呆れたような声をかけて、進んでいく。
「どうしたの真ちゃん、体調不良?」
「いや、……改めて、眩しいなと思っただけなのだよ。」
「あー夕焼け? 川に反射して、すっげぇきらきらしてるよな!」
 気付けばまた隣に並んで歩く、その眩しさを、正しく尊べればいいと。夢見るような夕焼けに寄せて。


(私多分高尾くんのことすごい好きな緑間くんに夢見てる。)(今日更新した夕焼け高緑のもうひとつ。)



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