「良くも悪くも愛まみれ」
続編





こんにちは。今日も私はファウスト様の雑用、事務、世話係として働いています。先日ファウスト様に詰め寄ったところ、何とも可愛らしい反応を見れたので暫く私の機嫌は良かったのです。
しかし最近の機嫌は急降下。

何故かと言いますと、

「では行ってきます☆」
「……行ってらっしゃいませ」

ああ、まただ。

最近学園の食堂で例の魔神の息子である奥村燐がお小遣い稼ぎで定食屋のようなものをしている。奥村燐の料理はそれは大層美味らしい。ファウスト様はそれがお気に召したようで、通い詰めているのです。

「……」

先程までファウスト様が座っていた椅子を睨みつける。
奥村燐の料理を気に入るまで、ファウスト様の食事は全て私が賄っていました。朝昼晩、間食夜食おやつまで全てです。

昼食だけとはいえ、楽しそうに出掛けられては私の作ったものが気に入らないと言われているみたいで気分が悪い。
…ファウスト様の分際で。

「どうかしたのか?」
「…いえ、何でもないですよ」

私とした事が、同僚に心配をかけてしまいました。そのくらい不機嫌になっていたんでしょうね…。

今日も一応用意していた昼食を自分で消費した。
味はいつもと変わらず、まあまあだった。

この分だと食材を無駄にするだけだ。どうせ明日も奥村燐の所へ行くでしょうし、作らないでおこう。






「名前、お腹がすきました」
「そうですか」
「…お腹がすきました」
「もう聞きました」

私をじっと見つめて空腹を訴えるファウスト様。最近ならこの時間にお出掛けなされるのですが…。一体どうしたのでしょうか。

「…昼食は無いのですか」
「てっきりいらないのかと思ってました」
「いつも用意してるでしょう」
「最近のファウスト様は奥村燐の作るものの方がお気に召していたようなので」

雑務をこなしながら昼食を作っていないと伝える。どうやら今日は出掛けないらしいですね。

「奥村君に止めるよう言ったのですよ」
「何故です?通い詰めていたではないですか」
「あれでお金稼ぎをしていたからです」
「ああ…そういえばはした金のような生活費を渡していましたね」

確か二千円くらいでしたっけ。そんなお金で生活など出来る訳がない。奥村燐も考えた訳ですが、ファウスト様によってぶち壊されたのか…気の毒に。私の知ったこっちゃありませんが。

「という訳で、私は空腹です」
「らしいですね」
「昼食を作って下さい」
「嫌です」
「…仕事ですよ」
「その仕事を昨日まで無駄にされていたので」

自分で消費したのは昨日だけで、実際は捨てていた。労働と食材を無駄にされていたも同然。

まず始めに何処に行くのか伝えてほしい。初めて奥村燐の元へ行った時は部下から知らされるまで何処へ行ったか知らなかったのです。
それから今までの数日間、昼食はいらないとの知らせも何もないまま勝手に済ませて満足げに帰ってくる事に腹が立っていました。

「…それは申し訳ないと思ってますよ」
「そうですか。なら存分に反省でもして下さい」

ファウスト様の方を全く見ずに坦々と書類と向き合いながら会話をする。これで少しでも反省したらいいんですがね。

「何でそんなに怒るんですか」
「…そうですね、」

もういっそ正直に言ってしまおうか。
そうしたらこの馬鹿なファウスト様でも理解してくれるかもしれないですから。


「妬いた、と言ったらどうします?」

にこりと笑って至近距離まで近づく。ファウスト様は数秒呆けた後に信じられないとでも言うような顔をした。

「名前が…?奥村君に嫉妬、ですか?」
「ええ、そう言ってるではないですか。学習能力低いんですか?」

私の毒舌にも反応する余裕がないみたいですね。そんなファウスト様も面白いですが。
いつも被っているハットがない頭は容易に捕らえられる。後頭部に手を回してその勢いのまま軽く口づけた。

「俺より他のものに夢中になるなんて許さない」

間近で目を合わせて小さく囁く。可哀想なくらい顔を真っ赤にしたファウスト様を置いて仕事へと戻った。



「〜〜っ…は、反則だ…っ!」


その後、ファウスト様は暫くの間、私と会う度に赤面するのでした。





end


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