足りないんじゃなくて





「はーもー、帰りたーい」

今日は校外学習。つまりは遠足。ちょっと池袋から離れた所にある自然公園みたいな場所に来てるけど、だいたい池袋周辺の幼稚園や小学校、中学校に通ってたらその遠足で来るような場所。
俺と新羅も例外ではなく、この公園には遠足と称してもう何度も来ている。つまり、まあこの公園には飽きていた訳で。

自由時間だけどする事もないし、ちょっとうんざりしてたけど、今はそんな事どうでもいい。

「は、はい!」
「ありがとう」

人があまりいない場所の木陰に座って弁当を広げる。
俺が初めて名前君に弁当を作った日から、ずっとそれは続いていた。勿論今日だって。

笑って受け取ってくれる名前君に、毎回恥ずかしくなってしまう。これはいつになっても慣れない。

「臨也も甲斐甲斐しいねえ。こんな君はまさに空前絶後だ」
「俺が作りたいだけなんだから、ほっといてよ新羅」

中学からの付き合いである新羅は俺の行動に度々何かしらのリアクションをする。
確かに最近の俺は俺らしくないという自覚はある。名前君を前にしたら今までしていた思考も策略も全部吹き飛んでしどろもどろになってしまうなんて、本当に俺らしくない。

「ん、うまい」
「よかった…」

元々料理は妹達にせがまれたりして作っていたから苦手ではない。でも、名前君に作るようになってからは楽しくてもっと上達したくて、料理本まで買ってしまった。
妹達に見つかった時に散々うるさく言われたのは記憶に新しい。

「あ、静雄と門田君」
「げ」

せっかくゆっくりしていたのに!本当にシズちゃんは邪魔だな…。

「臨也…!」
「よお、昼飯一緒に食っていいか?」
「いいよー」

新羅の馬鹿。
そもそも新羅も、俺が名前君を好きなの知ってるんだから気を利かせてドタチンとシズちゃん連れて何処かに行くべきだろ。

「ほら、静雄も座れ」
「何で俺が臨也なんかと一緒に居なきゃならねんだ!」
「それはこっちの台詞だよ。先に俺達が居たんだからそっちが消えてよね」
「んだと…!?」

ああもう本当に邪魔。
黙々と俺の手作り弁当を食べる名前君を見れないじゃない。

「名字も!何でいつもノミ蟲とくっついてるんだよ!」

あ、今のくっついてるって良かったかも。シズちゃんのくせに。

「…駄目なのか」
「駄目だ。お前までノミ蟲に変な事されちまうだろ」
「今のところされてない」
「今だけだ」
「……友達だから」

髪の間から見る名前君の目は、じいっとシズちゃんを見ている。シズちゃんからも見えているんだろうか。何も言わずに名字君の隣に座った。

友達。
そう言ってくれて凄く嬉しかった。おかげで顔は熱いしまともに顔を上げれない。

でも、

それでも、もっと違う何かを欲しいと思う俺はやっぱりいつもと違うんだろう。





─────
自分の遠足でよく行く定番の場所は奈良公園でしたww
小中高行った気がする…。
鹿のあれを指差しては「チョコボール」という子がありきたりだったなあ…。

ちなみに自然公園があるのか知りません←
だって大阪在住だもの!
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