もっと嵌ってきなさいな
※裏注意
荒い呼吸、赤い頬、涙を限界まで溜めた目元。これは明らかに欲情しきった顔だ。メフィストは震える唇で小さく俺の名前を呼ぶ。
「なに?メフィスト」
「ぁ…ッ名前…」
「感じてんの?俺、なーんにもしてないのに」
そう、俺は何にもしていない。
強いて言えば、メフィストをベッドに押し倒して中途半端に服をはだけさせて手首に手錠をかけただけ。あとは本当に何もしていない。ただ見つめていただけだ。
所謂、視姦。
「く、ぅ…」
「見られてるだけで勃起して口から涎垂らしてんの?ははっ、とんだ変態だなぁ」
「ちがっ…ちがう!」
「はあ?だったらそれ何だよ」
自分の状況を認めようとせずに否定するメフィストに苛立ち、ブーツのままメフィストの勃ち上がったモノを踏みつける。
「ぐああっ!いやっ名前!いやあ!」
「あーはいはい」
タイツの上からでも分かるぐらい濡らしておきながら嫌がる素振りをするから足を離す。
「ぇあ……ッ」
「あん?んだよ」
「……ッ、」
何か言いたげなメフィストを無視してソファに腰を落とす。その間も座ってからも視線だけで訴えかけようとするのをひたすら気付かないフリをする。
「っ名前…」
「んー?」
「何でっ…やめ、たんですか…っ」
「は?お前が嫌がったからだろ?」
「なっ…」
当たり前のように言うとメフィストは絶句した。そんなのお構いなしに俺は携帯を取り出し、いじりだす。
相変わらず必死な視線は俺に向けられたままで、思わず笑いそうになってしまうがそれを堪える。
「ん、くぅ…っ」
「あ、電話きた」
唐突に携帯が鳴り、見てみると雪男からの電話だ。何の躊躇もなく通話ボタンを押した。
「もしもしー、どうした雪男?」
「なッ、!?」
携帯からは雪男の落ち着いた声が聞こえる。内容は塾の講師の仕事について。俺は雪男の先輩だ。祓魔師としても、講師としても。だから度々相談を受けていた。
「んー?今なぁ、暇っちゃ暇だけど…」
「っ!?」
「そうだなあ、寂しがる奴がいるから止めとく。ごめんな」
雪男からの晩飯の誘いを断りながらメフィストの方をちらりと見やると足を摺り合わせながらぼろぼろと涙を零している。
「ああ、つーわけで」
「っ!!ふ、くんんっ」
「じゃあねー」
電話を切る直前に股間を撫でてやると、一瞬声を上げそうになったが何とか耐える。
電源ボタンを押し、携帯をそこら辺に置いてから再びソファに座った。
「も、やぁ…っ名前っやらあ…!」
「嫌って言われても、ほぼ何にもしてねぇよ」
「ひくっ…ねが、いぃ…さわっ、てぇ、さわってえ!」
「………」
「も、見てるだけなん、て…いやなんです!はや、く…名前に触ってほしいんですっ…」
必死に触ってもらおうと懇願するメフィストに背筋がぞくぞくするのが分かる。ああ、今の俺って相当嫌な顔してるだろうなぁ。
「いいよ、メフィストが望むままにしてやる」
「!名前…っ」
「ただし」
嬉しそうな表情をしたメフィストに人差し指を立てる。
さあ、もっと俺を惹きつけてくれよ。
「このままイけたらな」
その絶望に歪んだ顔が心底好きなんだ。