二度と覚めない眠りへと






黒で塗りつぶされた世界の中に、漸く見つけた一点の光。
ただ、光と云うにはあまりに歪で鈍いそれは限りなく黒に近い色で存在を主張していた。それでも俺はその歪んだ光に魅入り惹かれていったのだ。


「どうしたの?」
「え…?」
「ぼーっとしてたけど」
「ああ、考え事」

歪んだ光は淡く揺らめきながら俺の頬に手を添える。温かいそれは心地よくて離したくないと思った。

「…いざや」
「なに?」
「臨也は、何で俺の傍にいてくれるんだ?目が見えない俺なんて、お前の興味を誘わないだろう」

そう言うと歪んだ光…臨也が小さな溜め息を吐いたのが分かった。そして温もりが頬から離れ、体全体に移る。手探りで頭を探すと、俺の胸辺りにあった。

さらさらの髪を撫でると、より一層臨也の体温を感じる。


「俺は別に興味だけで一緒にいるわけじゃない」
「臨也…?」
「ただ好きだから。それだけじゃあだめかな」

臨也の声色は穏やかで、どこか切なげに揺らいでいる。

「一緒にいる理由なんてそれだけだよ。好き、好きだよ…」
「いざ、や……」
「ねえ信じて…お願い、っお願いだから…信じてよ…」
「臨也…疑ってなんかない。ありがとう…」

俺も臨也が好きだよ。

ゆっくりと頭から顔へ両手を滑らせる。少し濡れた感触と共に、臨也が笑ったのが分かった。


「…愛してる」





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『物書きのすゝめ』様へ提出用。
短く仕上げました。


  
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