甘い毒に浸水
今日の芥辺探偵事務所は所長が不在。残された佐隈、名前、アザゼル、ベルゼブブは事務所を出る際に芥辺に命じられた掃除を行っていた。
「さく、コータロー達は?」
「モロクさん人形を作ってる部屋の掃除をさせてます」
「…後で様子を見に行ってやろ」
「苗字君が行ったら、コータロー君達もちゃんとしますね」
さくはにこにこと笑って頼りにしてますよ、と言う。俺なんかよりさくの方がしっかりしてるし怖いと思うけどなあ。(主に酒を飲んだら)
「さくー!名前とイチャイチャしとらんとわいも構えやー!」
「はいはい」
「ちょっ…あしらい方雑っ」
雑巾を持ちながらアザゼルさんはさくに構って貰おうと必死だ。こっちにまで被害が来たら面倒だから、さくに頑張れと伝えてその場を離れた。背後からの恨みがましい視線は無視して。
「お、ベルゼブブさん掃除終わりましたか」
「ええ。苗字君はどうです?」
「俺もだいたい終わりましたよー。確認終わったらガキ達を見に行くんです」
そうですか、と相槌を打つとベルゼブブさんは雑巾をバケツに入れて後片付けを始めた。
ベルゼブブさんはいつ見ても可愛い。あのお腹やお尻を一回でもいいから思う存分に触ったり撫で回したりしたい。
初めて会った時から、そんな願望を抱いているのだが本人には言えない。まず了承を貰えないだろうし、ベルゼブブさんの契約者はさくだ。強制排便とか暴露とか能力を使われたくない。
「…ガキ達見に行こう」
はあ、と溜め息を吐いて部屋を出ようとする。さくとアザゼルさんはまだ言い合いをしているようだ。
「苗字君」
ドアノブを握ると後ろから呼び止められた。
この声は確か…いや、絶対ベルゼブブさん。
「……あれ?」
ぱっと振り向くと、そこには誰もいない。おかしいな。もしや幻聴?俺が変な願望持ってるから?…まさか。
「下ですよ、下」
「っわ、」
またベルゼブブさんの声がして、言われた通り下を向くと俺の足下にちょこんと立つベルゼブブさんがいた。
「ど、どうしました?」
「苗字君、私は先程の掃除で疲れました」
「はあ……」
「だっこして下さい」
「え?」
ジーンズの裾をくいくいと引っ張り、片手で此方に向かって手を伸ばすベルゼブブさん。
(あああああ何だこの可愛い生き物!本当に悪魔なのか!?)
一人脳内で悶えていると、痺れを切らしたのか「早くしろよこのノロマ野郎がァ」と舌打ちと共に聞こえた。
意を決して少し緊張する手でベルゼブブさんを抱える。あまりのもふもふ感に感動してしまった。
「うわああ…ベルゼブブさんきもちー!うわああなにこれ…」
ぎゅう、と抱きしめながら手や頭を撫でる。お腹やお尻はさすがに自重、というか我慢しているけど…。うん、これだけでも満足かもしれない。
「はっ!ごめんベルゼブブさん…あまりの気持ちよさについ…」
ギリ、と歯軋りが聞こえて我に返る。ちょっと触りすぎたか…。今怒らせたらもう二度と可愛らしくだっこして、なんて言ってもらえなくなるかも。謝りつつ体ごと此方に向ける。
少々顔を赤くしたベルゼブブさんがじとりと睨んできた。
「…っ苗字君の好きにしたらいいでしょう」
「えっ…いいんですか」
「私がいいって言ってんだろ!一回で聞けよクソがあ!」
「じゃあ遠慮なく…」
我慢していたお腹を撫でると他の箇所よりふかふかしていた。そのままお尻に手を這わせる。お尻から足までのラインを撫でていると唐突にアザゼルさんの声がした。
「あー!名前がべーやんにセクハラしとるー!」
「セクハラじゃない!撫で回してるんです!」
「自分気持ち悪いで…」
う、と返す言葉が無くなる。まあ確かにセクハラ紛いの事はしてたけど…一応了承は貰ってた訳だし。…というかアザゼルさんだけには言われたくない。
「あー…ベルゼブブさん、もう満足しました。その、ありがとうございました」
「…いえ、常日頃から私のプリチーボディに熱烈な視線を送り続けられても困るんでね」
「…バレてたんですか」
「当たり前です。私は魔界のエリートですから」
そう呟いてからベルゼブブさんは俺の腕の中から飛び立つ。温もりが消えた瞬間、寂しいような、勿体無いような感じがした。
「また触らせて下さい」
「……気が向いたらね」
赤くなる悪魔も可愛いものだ。
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自分がやりたい事を夢主くんにやってもらっちゃいました←
べーやんめちゃくちゃに弄くり倒したい…。