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(臨也)
「あ、すいません…」
どん、と人混みの中で肩がぶつかった。今のは明らかに携帯をいじりながら歩いていた俺の不注意だ。ぶつかってしまった人に謝ると、それはよく知る人物だった。
「折原」
「あれ、君だったの」
「俺で悪かったな」
「そんな事言ってないじゃん」
どうやら不良より質の悪い奴にぶつかってしまったようだ。折原は俺を見るなり腕を組んできた。こんなのは高校時代からされてるから今更抵抗しようと思わない。そうこうしている内に路地裏に引っ張られてしまった。
「ねえ」
「何だ?」
「俺、傷物にされちゃった」
「はああ?」
「だから責任取って」
何だ傷物って。何だ責任って。ただ肩がぶつかっただけだし、しかもちゃんと謝りもした。何なんだこいつ。いや知ってるけど。
「悪いが断る」
「ええー。何でー」
「傷物にもなってないし責任取る必要がないからだ」
「またまたぁ」
うぜえ。
頬を人差し指でちょんとつつかれ、青筋が浮かんだ。平和島、今ならお前の気持ちが分かる。今更で超ごめん。今度マックで何か奢る。
「ちょっと、何で不機嫌なのー?」
「今平和島の気持ちが分かったからな…」
「……何でシズちゃんなの」
「は?」
平和島の名前を口にすると、途端にテンションが急降下した。そんなに平和島が嫌いなのか…。折原は組んでいた腕にぎゅうっと力を込める。まるで離す事を許されないみたいだ。
「…シズちゃんの方がいいわけ」
「はあ?」
「…俺よりシズちゃんの方が好きなの」
折原は俯いて小さい声で問いかける。俺より低い身長で俯かれると顔が見えない。
「誰も平和島がいいとか言ってないだろ」
「だって……」
「子供みたいだな…。ったく、」
片手で折原の顔を上向かせ、目を合わせる。思ってたより近距離でびっくりしたが、それは折原も同じだったようで、顔を赤くした。
「ちょ、か、顔ちか…い…!」
「責任、取ってやろうか」
「え…?」
「その代わり、俺は独占欲強いからな」
「……っ!」
折原は更に顔を真っ赤にして目を見開く。こんな折原の顔は初めて見るから凄く新鮮だ。何だ、こんな表情も出来るんじゃないか。
「好き!君ラブ!愛してる!」
「はいはい」
そうして俺達はここから始まった。
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