一目惚れってやつですか。
そういえば今日お母さんの誕生日だ。
誕生日プレゼント買ってないや…。
そんな考えをしていたときに目の前に花屋。
あ、花束。
お母さん花好きだし、きっと喜ぶな。
花束にしよう。
なんとも適当な考えだけど、いいかな。


お母さんはひまわりが好きだって言ってた気がする。
うん、ひまわりの花束を作ってもらおう。
店先に花を運んでいた店員さんに声をかける。


「あのー、」
「はい、なんすか?」


そう言って笑顔で振り返った店員さんが。
あまりにかっこよかったので。


「どうしました?」
「…あっ、えっと、あの、花束を…」


ものすごい衝撃が体を回って一瞬動けなくなった。


「どんな花束にします?」
「え、と、ひまわりの、」
「じゃあひまわりを入れて適当に作って大丈夫っすか?」
「あ、はい」


店員さんは爽やかに笑いながら店内に入っていった。
後を追って私も入る。


「誰かにプレゼントっすか?」
「はい、あの、母が誕生日で」
「お母さんに!いいっすねー、そういうの」
「いやぁ、プレゼント買うの忘れちゃってたんで…」
「はは、なるほど。でも花束あげるので十分だと思うっすよ」
「そうですね」


いい人だなぁ。
こんなコミュ障な私に話しかけてくれるなんて。


「お母さん、ひまわりが好きなんすか?」
「はい、そうみたいです」
「あなたは?」
「え、」
「あなたは好きな花とかあるんすか?」
「わ、私は、ガーベラ、とか好きです」
「ガーベラ!いいっすよねー、俺も好きっす」
「なんか可愛らしいですよね、パァって広がってて」
「うんうん、わかるっす!はい、完成です」


そう言って手渡された花束はすごく綺麗で。


「わぁ、すごい綺麗です」
「ならよかったっす」
「ありがとうございます!」


お金を払って店を出たとき呼び止められた。
振り返ると満面の笑みでガーベラを持ってる店員さんが。


「プレゼントっす!」
「え、いや、悪いです、そんなの」
「いいんすよ!あ、でも、」
「?」
「そのかわり名前教えてもらえないっすか?」


一輪のガーベラを受け取る。
色は黄色で、私の一番好きな色だった。


「藤原、藤原五月、です」
「五月ちゃん」
「はい」
「またいつでも来てね」
「あの、店員さんのお名前は?」
「あ、セトっす。瀬戸幸助」


セトさん。
教えてもらった名前を口のなかで転がして、笑った。


「はい、また来ます!私、セトさんのことスキになっちゃったみたいなので!」


そういって後ろをむいて走り出した。


しばらく走って店のほうを振り返ると立ち尽くしているセトさんと目があった。
私が真っ赤な顔で手を振ると、セトさんも真っ赤な顔で振り返してくれた。


きっとこの花束をお母さんも気に入ってくれるだろう。
あぁ、幸せでいっぱいだ。
そっか、これが一目ぼれってやつか!


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -