05 金丸、数学教えて! そう言って三宅が部屋を訪ねてきた。 明日小テストなんだけど全然わからなくて。 困ったように笑った。 三宅はバカだけど、いつもバカなりに一生懸命だ。 頑張っている、と思う。 勉強に対してやる気のない沢村や降谷とは違うから教えやすい。 言ったことを素直にやって、きちんと問題を解くことができる。 だからなのかなんなのか、応用問題が全くできないのだが。 真剣に問題に取り組む横顔を盗み見る。 相変わらず女子みたいだな、と思う。 俺と同じくらい日にあたっているのに白い肌。 くりっとした大きな目に長いまつげ。 いつも短くしているけど、少し伸びてきた髪とか 少し高めな声とか。 背もどちらかというと小さめで、野球をしているのに華奢な体。 どこをとっても女子のようだ。 「あ、解けた!金丸、これあってる?ってびっくりしたぁ!なんでそんな見てんの?顔に何かついてる?」 「ペンのインクついてる。」 「え、どこ?」 「ここ、」 そんなの嘘だけど。 頬を触ると、当たり前だけど暖かくて、なんとも言えない、 言ってはいけない感情が溢れそうになる。 「とれねーよ。明日の朝洗えばいいんじゃね?」 「そりゃそうか。そうするー。あ、これあってる?」 「んー、あぁ、正解。」 「やった!これで明日のテストは完璧だ!」 「計算ミスとかすんなよ。」 「しねーよ!んじゃありがと、金丸!おやすみー。」 ぱたん。 小さく音をたててドアがしまった。 あぁ、やっぱり俺、 三宅がすきだなぁ。 (俺の方が先に出会ってんのに、)(東条がうらやましい。) |