11


「信二、」
「おー、どうした」
「三宅の様子見てくるから先ご飯食べてて」
「わかった、三宅もこれそうだったら連れて来いよ」
「うん」


コンコン、ノックをしても返事はない。
部屋から明かりが漏れてないし、寝てるのかな。
ドアノブを回してみると開いた。
鍵かけ忘れてる…危ないなぁ。

「三宅、」

手探りで部屋の電気をつける。
二段ベットの下で寝てる三宅がいた。
床には体温計と救急箱が落ちている。
三宅の手には携帯。
いそいそと近づく。

「三宅、」

もう一度声をかけるけど返事はない。
手から落ちそうになっている開きっぱなしの携帯を閉じてやろうと触ったら画面には俺が送ったメール。
ちゃんと読んだのかな、読む前に寝たのかな。
ぱたん、と携帯を閉める音に三宅がぴくりと反応した。

「んー…」

小さく声を漏らしてゆっくり目をあける。
視界に俺の姿をみつけたらしくて驚いた顔をした。

「あれ、東条くん…?」
「うん」
「なんでいるの?」
「あ、メール読んでない?」
「…読んだ。! もう部活も終わったの?」
「うん」
「うわぁ、すごく寝てたよ」

…なんだろう、この違和感。
俺は昨日三宅に(信二があんな真面目な顔をしてたんだから冗談ではない、はずの)告白をされて、その返事をしようと覚悟を決めてきたのに。
三宅もちゃんとメールを読んだんだったらわかってるはずなのに。
なんで何事もないような顔をしてるんだろう。

「一応体温はかろう、体温計どこだっけ、」
「あ、ここにあるよ」
「ありがとう、東条くん」

床に落ちていた体温計を拾って渡す。
「なかったことにしてやるな」
信二の言葉が脳内にリピートされる。
そうか、三宅はなかったことにしようとしてるんだ。
ピピピ、体温計音で思考が遮られた。

「あ、もう平熱くらいに下がってるよ」
「三宅!」
「は、はい!?」

突然大きな声を出したため、三宅はびくっと体を震わせる。
ひとつ深呼吸をして覚悟をきめる。

「三宅、ちゃんと俺、考えたんだ。」
「え、うん、…何を?」
「今まで気づかなかったのが不思議なんだ」
「いや、まじで何の話なのかさっぱりなんですが」
「俺は、三宅のこと好きだよ。付き合おう」
「あ、無視、そうすか、はぁ…ええ!?」

大きな声に今度はこちらが驚く番。
何か言おうとして口をぱくぱくさせている。

「え、何、なんでこのような話に…?」
「昨日、三宅が言ったんだよ?」
「いったい何を…」
「俺のこと好きだって」
「!? ま、まじで!?」
「…覚えてない?」
「全く…」
「え、じゃああれはうわ言…?俺の勘違い?」
「ちっ、違う!確かにうわ言かもしんないけど…」

そこまで言って三宅は黙って俯いてしまった。

「三宅…?」
「……き、だよ」
「え?」
「俺も東条くんこと好きだよ…、その、恋愛対象として…。東条くんも、本当にそうなの?」

俯いたまま静かに聞いてくる。
ああ、なんだか、

「…うわっ、な、何すんの!?」

無性に抱きしめたくなってしまった。
から、抱きしめた。

「好きだよ、とっても。大好き」

顔をみたくなって少し体を離すと、真っ赤な顔をした三宅がいた。

「ほんとに?」
「ほんとに。」
「ほんとにほんと?」
「ほんとにほんと。好き」

だんだん涙目になっていく。
ぽふ、と肩口に顔を埋められた。

「ありがとう…」
「こっちのセリフだよ」

ほんとに、何で今まで好きだったことに気づかなかったのか。
緩んでしまう顔を隠すため、俺も三宅の肩に顔を寄せた。





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