09


「俺東条くんのこと好きなんだから…」

嫌な予感はあたった。



「東条、」
「あ、信二助けてー、三宅意識なくなっちゃって」
「…あぁ」

三宅が風邪を引いた、東条が寮まで送ってる。
そう聞いてなぜだか教室を飛び出していた。
少し遠くでチャイムの音が聞こえる。
あーあ、授業、無断欠席だ。

「結構熱高いみたいなんだ。これで朝練出るなんて、無茶するね」
「あぁ、そうだな」

なんでもないような顔をしてるけど東条は混乱してるみたいだ。
全くこっちをみようとしない。

「何かあったのか」
「え?いや、別に?」
「そうか」
「うん…」

それからは無言で、三宅を部屋に寝かせた。
すーすー、風邪引いてるのか不安になるくらい穏やかな寝息。

「早く授業帰らないと怒られるね」
「あぁ、そうだな」
「行こっか」

部屋を出る前に一度三宅の顔をみる。
三宅、そんな熱で朦朧としてる時に言ったらダメだ。
冗談だって、間違ったこと言ったんだって思われるだけだぞ。
東条は、なかったことにしようとしてるぞ。
いいのかよ。

「東条、」

ドアの鍵を閉めながら声をかける。

「何?」
「…なかったことにしてやるな」
「………」
「帰るぞ」

何を、と東条は言わなかった。
だいぶ前から終わっていたんだけど、これでほんとに最後だな。なんて思った。




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