08


はっ。
目が覚めたら布団の中だった。
あれ、全部夢だったのかな。



んー、寝転がったまま背伸びしたら足がつりそうになった。痛い。
まだ頭がボーっとするな、少し痛いし。
ってことは風邪を引いたのは夢じゃないね。
夢?これも夢?
いや、これはたぶん夢じゃなくって、んん?

「三宅ー、起きたか?」

ノックもなく勢いよく開けられたドアから入ってきたのは金丸。
びっくりするなぁ、ノックしてよ。
言おうとしてびっくり。
喉いった!喋るの辛い。

「金丸、のど、痛い、水」
「今買ってきたところだ、ほら」
「ありが、と」

けほけほ、少し喋るだけで咳がでる。

「寝転がったまま飲もうとするな!こぼすぞ!」
「ごほっ、」

起きれない、という意味で手を金丸に向かって伸ばす。
最初は無視されたけどうーうー、って唸ったら舌打ちしながらも起こしてくれた。
こっちは風邪なんだから、舌打ちやめてよ。

「俺ら今飯食ったところだけど、お前食える?」

ペットボトルを開けながら首を降る。
水を飲むだけでこんなに痛いのにご飯なんて食べれるわけない。
だよな、と言ってどうしよう、って顔を浮かべるのがなんか可愛い。

「風邪薬、ある、ご飯、食べなくても、いいやつ」
「まじか、どこ?」
「ん、あれの、1番上」

机の隣にある小さい三段ボックスを指差す。
薬とかがいろいろ入った救急箱の中に入ってるはず。

「あった、これだろ」

ぽいっと箱を投げられた。
普通なら、普通に受け取れるけど、ボーとしてたから頭に直撃。

「あ、わり」

ほんとに悪いと思ってんの。棒読みだよ。
しかもこれ違うし。
酔い止めだし。

「違うー」

ぽいっと投げ返す。
箱をちゃんとみてようやく気づいた様子。
しっかりしてよ。

「ほらよ」

今度こそ正しいのを持ってきてくれた。
投げずに、手渡しで。
やっと俺が風邪なのをわかってくれたみたい、遅いわ馬鹿。
薬を飲んでまたいそいそと布団に潜る。
眠くて仕方ないんだ。

「なぁ」
「んー?」
「東条に何言ったんだ」
「んー?」
「あいつ練習ミスりまくりだったぞ」
「んー」
「聞いても、三宅が…しか言わねぇし」
「んー」
「おい、聞いてんのか」
「んー」
「はぁ…おやすみ」
「ん…」

まぶたを透けてわずかにさしていた光が消えた。
パタン、ドアの閉まる音。
金丸ありがとう。助かりました。

でも俺、東条くんに何言ったの。
何も記憶にないんだけど…まぁ、いっか。
おやすみなさい。





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