【遊びたまえ、これは命令だ】


 只今デスクワーク中。この机を埋め尽くすような書類の束を片付けないと、今日は眠れない。

「アンディ」

 だからユウギリ。

「んー?」
「あそぼ?」

 どんなに可愛らしく小首をかしげておねだりしても、イエスとは絶対に言えないんだ。

「んー、仕事中」
「そっかあ」

 おっと、今日は随分とあっさりしているな。いつもだったらもっと拗ねるか悲しそうな顔をするのに。

「…………」

 まあいい。こちらとしては好都合だ。彼女もいつまでも子供というわけでは無いのだろう。ひたすらにペンを走らせる。終わったら大人しく待ってる彼女の為にケーキでも買ってきてやろうか。

「…………」

 でもなあ、ユウギリ。

「……ユウギリ」
「なーに?」

 目の前でじっと見つめられてちゃ、集中すら出来ないんだ。しかも机に乗り上げてさ、まさに目と鼻の先じゃないか。

「分かったから、どきなさい」

 ため息を吐きつつ、一旦作業を中断する。さあて、今日眠れるのは一体何時頃だ?

「ん!」

 そうすると彼女は花のような笑みを浮かべるのだった。猫の様に身軽に机から飛び降りる。最初からそのつもりだったのだろうな。この娘はそういう方向にしっかり成長してしまっているのだろう。その可愛らしい笑顔は保護者にも似て、実に小賢しい。

「……はあ」

 しかそれがまた愛らしいのだから、たまったもんじゃない。





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