*フェザー時空で皆本光一が破壊の女王を撃った後なので、色々お察し下さい。前作と繋がりはありません。二人共頭おかしいです。
【心中ごっこ】
濁った泥水みたいだと思った。
「撃って、きたの」
彼の目。幾何か前の輝きはとうに失せていて。
「……うん」
まあ、それもずいぶんと前からすさんだ物になってはいたけれども。
「そう……」
人知れず彼に焦がれていた私は、それを少し寂しく感じていた。
「でね」
「うん」
彼が銃を取り、微笑む。
「僕も、逝こうと思うんだ」
瞳さえ隠れてしまえば、少しやつれてはいてもそれは一昔前と同様な優しい笑み。
「だから死体の処理は私に、と?」
「うん」
言っていることは酷く物騒で、物悲しいけれども。
「悪いね」
「いいえ」
私は大喜びなのよね。
「それじゃあ、頼んだよ」
だって私は彼に選ばれたのだ。彼を看取り、彼の最期の声を聞くものとして、この、この私が。
「うん」
何て素晴らしいことだろう。
「……ありがとう」
それが他に適任がいなかったというだけの理由でも。
「……さようなら」
そして彼は逝った。銃声の音が軽やかに彼の姿を赤く彩る。最後の言葉が謝礼とは、実に彼らしい終わりだ。
彼の死体は、死体だというのに、どうしてか始めからこうだったとでも言うかのように違和がない。前に死んでいた心に、やっと体が追いついたとか、そういう事だろうか。そういう事だろうね。きっと皆本光一は、これよりもっと前に死んでいたんだ。
「さて、と」
うーん、この後とどうしようかな。私のやる事はもうないし、戦争できっと人類も皆滅びちゃうだろうし。
「あ、そうだ」
彼の死体を片付けたら、私もいっしょに死のうかな。いいなあ、それ。とっても素敵だな。心中ってやつだよ、それ。愛する人が愛する人とやるやつ。いいね。真似事でも、悪くない終わりだわ。ようし、そうしよう。
「そこに私の居場所はあらざれど」
額に当てた銃口は、冷たかった。
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