伝えたい  | ナノ







 君は僕を見ていない。
 
 そんなこと分かってる。
 
 だけど・・・僕は・・・







 
 「ゆやさん・・・」
 目の前に横たわる少女の名を呼ぶ。
 少女が目覚める気配はない。
 先の信長と狂の戦いで負った傷は、治療した。
 4年前に自分が負わせた傷と共に・・・。

 どういう結果にしろ、彼女は傷ついてしまった。
 いや、傷つけてしまったのだ。

 狂一人のせいじゃない・・・
 僕にも責任はある・・・

 自分の不甲斐なさを恨む。

 何があっても傷つけたくなかったのに・・・
 護りたかったのに・・・
  
 自分は、もうすでに・・・4年前に彼女を傷つけている。
 だから・・・2度と傷つけたくなかった。

 「ごめん」
 心の底からこの言葉が出てくる。
 何に対しての謝罪なのか・・・

 壬生のゴタゴタに巻き込んでしまったこと?
 
 怪我をさせてしまったこと?

 それ以前に、
 兄の敵だということ・・・
 

 自分が敵だとばれてから、ずっと会わないでいた。
 また、逃げていた。
 
 「逃げてばかりのお前に何ができっるつーんだ!!壬生から逃げ、俺から逃げ、自分自身からも逃げてるてめぇによ!!」

 狂の言う通りだ。

 自分はまた逃げていた。
 こうなることはわかってたはずだ。
 なのに・・・逃げていた。

 僕が・・・僕が紅の王になれば・・・

 決意を新たにする。
 

 そして・・・もう一つ謝罪の理由が・・・。

 
 「だって・・・だって私狂のこと・・・。」
  

 狂の元から離してしまったこと。
 
 表に出ていたのは狂だったけれど、狂の中で自分も確かに聞いた。
 そして・・・同じ体の中にいた狂の驚き様が・・・分かりすぎるほど分かった。

 「ゆやさん・・・」
 また、少女の名を呼ぶ。

 例え報われない想いでも・・・
 この気持ちは変わらない。  
 彼女を護るために・・・紅の王になろう。

 逃げてばかりの自分を変えたのは、彼女だ。

 
 言いたいコトがたくさんある。

 伝えたいコトがたくさんある。
 

 
 「京四郎を信じたいの!!」


 ・・・・・・。


 彼女が目覚めたら・・・
  一番に言おう。
 
 
 ありがとう、と。





*****
私が初めて書いたKYO文章。
29巻でゆやがさらわれた後。





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