命 | ナノ
少し熱っぽい。
胸がはっている…気がする。
デカくしてやる、なんて昔言ったが…。
今更効いてきたか?
そんなくだらない思考を振り払うと、ある予想に辿り着いた。
【命】
「お前…月のヤツきたか?」
毎夜の如く求め合う情事の後。
一糸纏わぬゆやの腹に触れながら、鬼眼の漢は尋ねた。
「え?何?いきなり…」
漢が思わぬ話題にふれてきたことに、驚く。
いつもは、女の子の月行事の話をするだけで眉根を寄せるのに。
「……いつきた?」
「そういえば…今月も先月も……きてない…」
不思議に思いながらも、指折り数えながら考える女と予想が確信に変わった漢。
「…熱くねぇか?」
「え?」
「体温」
「そ、それは狂が…色々と……するから…」
頬を染めながら、先程の行為を思い出す。
身体が火照って仕方なかった。
とろけてしまいそうだった。
否、実際とろけきっていた。
「ソッチの意味じゃねぇよ」
漢は否定しながらも、面白そうに喉を鳴らす。
「昼間も暑いとか言ってただろ」
「うん…。なんかポカポカして」
「……」
ゆやはそう言うが、今日は肌寒いくらいだった。
「…大丈夫か?」
「?…何?」
「吐き気」
「そう!なんか最近やたらと吐き気が……って、え!?まさか……」
話していなかった吐き気の話題をふられ、ようやくゆやもある予想に辿り着く。
「そのまさかだろうな」
「…なんで狂が先に気付くの…」
「あ?」
「私自身より先に…」
なんだか悔しい。
「こんだけ触れてりゃ、イヤでも変化に気付くだろ」
下腹部に触れていた手が、上へ上へと滑らかに動き、片方の胸で止まった。
「胸がはった」
「ぁ…やっ…」
柔らかく揉みしだく。
「体温が高くなった」
「ちょ、…」
額と額をくっつける。
「で、吐き気もあるんだろ?」
辿り着く答えは一つ。
「……赤ちゃん、できちゃった…」
両手で自分の腹をさすりながら、ゆやは呟く。
「……予想だ。医者いけよ」
「…うん」
無意識に腹をさすり続けていた。
「……狂」
「…?」
「…ホントだったら、産んでもいい?」
恐る恐る、聞く。
とてつもない幸福感とものすごい不安感が同時に襲いかかってきた。
「ハッ、何言ってやがる」
「…ダメ?」
「抱いた時点で、こうなることはわかってただろ」
予防なんて何もしていない。
毎度、中で果てている。
…何度も。何度も。
「確信犯ってこと?」
「……さぁな」
いつもの、口角を片方だけ上げた笑い。
この笑いに勝てないことを知っているゆやは、諦めを含みつつ、それでもむぅと頬を膨らます。
「…狂、嬉しい?」
これだけは聞いておきたかった。
「……」
「ねぇ、…んっ」
淡い期待と同じ答えは返ってこなかったけれど、変わりにとびきり甘い口付けが返ってきた。
そのまま、ゆやの腹部にも慎重に、優しく、口付ける。
「…さぁな」
「…もぉ」
狂の表情は見えないが、囁く声は柔らかい。
彼が伝えたいこと。
口にしなくても分かる。
肌を通して、仕草で伝わる。
「私も、すっごく嬉しいよ」
お腹の中の新しい命にも、二人の想いが伝わるように。
祈りを込めて小さく囁いた。
*****
狂さんがよくしゃべる。←
別人すみません。
若干裏い(裏っぽい・エロい)言葉も使ってますが、がっつり裏ではないので、修正加えて表に持ってきました。
妊娠発覚狂ゆやとかまさか自分が書くとは思ってなかった…。
とにかく倖せだといいな。
ゆや、倖せになれよ。
鬼眼さんと。
二人で。
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