面倒見のいい人 | ナノ






付き合い出してから分かったことがたくさんある。

中でも際立つのは、堂上の面倒見の良さだ。

付き合う前から面倒見がいいことは知っていたが、付き合いだしてからの堂上はなんというか…。



【面倒見のいい人】



「過保護?」

「何だ」
郁の呟きに、横を歩いていた堂上は怪訝な顔をする。
「いえ、何でもありません!」
考えていたことが口に出たことに焦りながら答えた。

『お前の戦闘能力が高いことと俺がプライベートでお前を心配することは別問題だ』

戦闘職種の郁でも、言われて嬉しい言葉である。
だが、一人でコンビニに行くのもダメとは…心配しすぎではないか。今まで散々行き来した道だ。

一緒に居れる時間が増えるのは嬉しいが、毎回呼び出すとなると、なんだか申し訳ない気がした。

「わざわざ付き合ってもらって、すみません」
「勝手に心配して付いてきてるんだから気にしなくていい」
「じゃあ…ありがとうございます」
「ん」
それでいい、とばかりに頭に手が触れた。

こういうスキンシップが出来るのは、やっぱりいいよね。
と、コンビニの行き帰りという短い時間でも、二人きりの空間に感謝する。

ギュッと抱き合ったりキスしたり、そういう行動以外にも、触れて落ち着くものはたくさんある。
堂上の場合、そのアクションは頭に対するものが多い。
恋人じゃなく部下としてもだ。
わざわざ紙を丸めて、手塚の頭を叩いていたくらいだから。

「教官ホント面倒見がいいですよね」
「…お前が言うか」
「そ、それもそうですね」
一番面倒を見られている自覚はある。

仕事だけじゃない。
公私共に面倒見られまくりである。

「まぁ上官として、部下の面倒を見るのは当然だが…」
「玄田隊長とか、上官の面倒も見てますよね」
日頃のやっかい事の任されっぷりを思い出し、笑いがこみ上げてきた。
「そっちは困る」
言いながら渋い顔になる。

「緒方副隊長的ポジションを継ぐんじゃないかってどっかで聞きました。特殊部隊って性質的に玄田隊長タイプが多いから」
基本的にデスクワークなど細かい仕事より身体で動くタイプばかりだ。

「どこで聞いたんだ。そんな情報」
「噂で」
「柴崎か」
図星だが返事はしない。

「オレも元々は隊長タイプだ」
だから小牧の方が向いてるんじゃないか、と続ける。

「小牧教官は隊長の思いつきとか面倒なことはうまく回避しそうな気が…」
「するだろうな。回避」
「やっぱり。堂上教官しかいないんじゃないですか?」
渋い顔の堂上がはぁ、と深いため息をつく。

なんだか切ない空気なので、郁は話題を進めた。

「面倒見がよくなったのって熱血から冷静になったからですか?」
「そうかもしれない。向こう見ずだと周りの面倒見る余裕もないからな」
「じゃあ王子様より後なんですね」
王子様は面倒見いい感じしたけどな、と郁は思う。

『万引きの汚名を着てまでこの本を守ったのは君だ』
言って触れた手は、とてもあたたかかった。

「その後くらいから部下を持つ立場にもなったしな」
「じゃあ…あたしに会って面倒見よくなったんですか?」
「どうしてそうなるんだ」
予想外の発想に驚く。
「だったらちょっと嬉しいなって」
「…嬉しいか?」
「堂上教官が今の堂上教官なのは、王子様があったからで、それってつまりあたしに会ったからで。あたしは今の面倒見がいい教官に色々助けられてるので、お似合いになるようになってるのかなって」
上手く言えないが、一言にすると…運命を感じるって話だ。

「お似合い、か」
納得したように呟く。
改めて言われると恥ずかしい。

「有り難いが、職務面ではもう少し成長しろよ」
「わかってます」
いつまでも面倒見られているつもりはない。

「プライベートでならいくらでも面倒見てやる」
繋いでいた手をギュッと握られた。

もうすぐ寮の入り口だ。

「いくらでもって…」
期間的にもですか?
と一瞬考えたが、それってもしや一生…と思考がぶっ飛びかけたので言葉を切る。

そんなこと聞いたらプロポーズみたいではないか。

「また明日な」
手を引っ張られ、軽くキス。

「は、はい!」
自分の思考に照れながら、手を握り返す。

分かっているのかいないのか、少し笑って堂上の手が離れた。

そして、それぞれ自分の部屋へ向かう。


郁は赤くなる頬をペシペシ叩きながら、柴崎の待つ部屋へと歩いた。

堂上の一挙一動に、相変わらずドキドキさせられるのが何だか悔しかった。





*****
えっと…よく分かんなくてすみません。
多分堂上さん深い意味はないと思います。
率直な気持ちを口にしただけだと思われます。

日常堂郁的に、コンビニ帰りに特に意味のない会話をする二人が書きたかったんです。会話のネタが偶々教官の面倒見の良さだったんです。

恋人同士の会話なんて半分くらいどうでもいい話ですよね。
けどそれが本人たちは楽しいんだって話です。多分。




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