2時間半の距離 | ナノ






新幹線はそんなに混んでいなかった。
疲れもあって寝てしまうかと、乗る直前までは思っていたけれど、妙な興奮状態で全く眠気はこなかった。
ただとにかく、一番に今日の仕事っぷりを話したい人がいた。

怪我の状態も心配で。
あんな状態で置いてきてしまった申し訳なさと、あんな状態で告白してしまった恥ずかしさもたくさんあった。
階級章のお礼も言いたかった。
そして、いきなりキスをかまして、「告白する」と無我夢中で宣言してしまったことも謝りたかった。

あれは…いくらなんでもないない!!
一応女なのに…一方的に唇奪うとか突っ走りすぎ!!

自分の行動が信じられなかった。

真っ赤になりながら、あーもう!!とか、ありえないー!!と、心の中で泣き喚いていると。

「おねーちゃん、お熱でもあるの?顔が赤いよ」

7、8歳くらいの女の子に、顔をのぞき込まれた。

「い、いやいや!!大丈夫だよ。心配してくれてありがとう」
一瞬驚いたが、すぐに女の子に声を返す。
一歩遅れて女の子の母親らしき人が現れた。
「お隣いいですか?」
「もちろんです!」

母親は、女の子を挟んで郁と隣り合わせで座る。

「どちらまで?」
「東京です」
「あら、私達も東京に帰るところなんです」
「あたしもです!」
「おおさか、楽しかったよー」
女の子が満面の笑みで郁に話しかける。

「これおみやげなんだ!」
「あ、コラ!!」
嬉しそうにに一冊の本を見せた女の子を、母親が慌てて窘める。

「コレ…」
一目で郁には分かる。

あの本だ。

王子様が…堂上教官が守ってくれた、あの本だ。

「良化法の規制図書ですよね?」
声を潜めて母親に問いかけた。

「あ、はい。この子このシリーズが大好きで。でも東京だと規制が厳しくて、この本だけ持っていなかったんです。でも、たまたまこっちで寄った小さな本屋さんにあって…」
「よかったね!」
母親が話し終わる前に、郁は女の子の頭をポンポンと撫でる。

「うん!」
女の子は擽ったそうに笑う。
郁も嬉しくなって、微笑んだ。

郁にとっては、やっぱり図書隊は正義の味方で、メディア良化法は憎むべき悪だ。
女の子のこの表情を見ると、特にそう思ってしまう。

当麻蔵人を守ったことによって、郁や図書隊が守ったのは、当麻だけの自由じゃない。
日本中の表現の自由や知る権利を守ったのだ。

自分の読みたい本を自由に読めるように。
いつかそんな時代が来るように。

それをみんなわかってたんだ。
途中退場を余儀なくされた彼も。

…自分の大好きな作家を、本当は最後まで守りたかったに違いない。

それを階級章と一緒に、郁に託した。
お前はやれる、と託された。


会ったら、一番に何と言おう。

『笠原、無事任務を終えて帰還しました!!』
やっぱりコレかな。

『好きです!堂上教官!!』
コレは、いくらなんでもいきなりすぎる。
でも…もうバレてるんだから関係ないか。

『カミツレありがとうございました!!』
教官のお陰です。本当に。

そう考えると、また涙が溢れそうになった。

とにかく今は…早く会いたい。


堂上教官に早く会いたい。






*****
うまくまとまらなったーorz
何が書きたかったか分かんないですね。

新幹線の中の郁。
堂郁じゃなくて堂←郁ですね。
2時間半の距離が我慢できないって文が、すごく活字甘の魅力だと思いました。
妄想で感情が伝わる感じ!!

甘さがラストに凝縮されたような話です。

なかなか郁が来ない数日の、教官側のお話も書いてみたいなぁ。





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