今年の抱負 | ナノ
「どぉ!?蘭ちゃん可愛いから…何でもうまく着こなしちゃうのよね〜!!」
「……」
上機嫌に話す由希子の声なんて耳に入らない。
彼の視線は、綺麗に着物を着こなし、長い髪を珍しく結い上げた幼なじみに釘づけだった。
少し俯いて照れたように頬を染める表情に、いつもは恐ろしくきれる思考回路も完全停止。
【今年の抱負】
「ちょっと、新一!?聞いてる!?」
「…へ?ごめん、なんだっけ?」
眉を吊り上げて、非難の目を向ける蘭の声で新一は我に返った。
工藤邸でまったり新年のあいさつをした後、由希子に言われ、毎年恒例の初詣に二人で来たのだ。
「さっきからずっとうわの空で…こっち見ないでしょう…」
「いや、そんなことねぇよ…」
言いながらも新一の視線は宙を泳いでいる。
「ほら…なんか変よ?」
心配そうに顔を覗き込む。
「べつに…。ほら、さっさと詣っちまうぞ!!さみぃし…人多いし…早く帰ろうぜ」
素っ気なく返した。
(蘭が歩くたびに見える項にドキドキ…なんて死んでも言えねぇ…)
普段見えない所が見えると…何故か目で追ってしまう。
「…ファンの子とかにバレてこんな人込みの中で騒がれたら…名探偵さんは大変だもんねぇ…」
静かな声が言い放つ。
嫌な予感。
「オイ…オメェなんか勘違いしてねぇ?」
「勘違い?」
「…どうせまた事件のコトでも考えてたんでしょう!?とか思ってんじゃねぇよな…」
「違うの?」
予感的中。
「違っ…」
言いかけて止めた。
(やべぇ…事実は言えねぇし…)
「何よ?」
何も知らない蘭は不機嫌に尋ねてくる。
「…はぐれんなよ、方向音痴」
言って蘭の手を掴み、ずかずかと人込みを掻き分け、前に進み始めた。
寒いのに顔が火照ってくる。
「…話そらさないでよ」
後ろで呟く蘭の頬も赤いことに、新一は全く気付かない。
(今年こそは…今年こそは幼なじみ脱出出来ますように!!!)
一万円札を投げ入れて熱心に拝む高校生が、あの東の名探偵だとは誰も気付かない…。
***
こんなヘタレな高校一年の冬…笑
毎年同じ願い事してればいいと思いますv
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