らっきょ | ナノ らっきょ



 マリューの方が先に仕事を終えたので、久しぶりに家に帰って晩御飯を作っていた。ムウも今日から日を跨ぐ休暇期間なので、二人の家に帰るはずだ。
 なのに、マリューも把握しているムウの勤務時間がとっくに終わっても、なかなか彼は帰ってこなかった。
 最初は残業だろうか、と思っていたのだが、一人で待っているとだんだん不安になってくる。
 マリューに連絡しそびれる残業くらいなら、生きてはいるはずだ。でも、何かがあってどこかで記憶改竄なんてされていたりしたら……。
 さすがにそれはないと自分に言い聞かせるが、マリューにとっては軽い(一般的には軽くない)トラウマになっていた。
 増えていく揚げ物を見つめながら、これが出来上がったら連絡をしようと心に決める。
 丁度その時。
 ガチャガチャと玄関の鍵を開ける音がした。

「ムウ!」
「すまん。調整が長引いて遅くなっ……」
 帰るなり玄関でいきなりマリューが抱きついてきたので、驚くムウ。

「私は仕事じゃないんだから、心配するから連絡くらい頂戴!」
 ホッとするのと同時に、どうして連絡くれなかったの、という気持ちが沸き上がってきてそのまま訴えた。

「承知いたしました」
「おかえりなさい」
「ただいま」
 微笑みあってキスをした。



「なんか怒ってる?」
 大量の揚げ物を前に、ムウがマリューに尋ねる。

「あなたが遅いから作りすぎちゃったわ」
 マリューは小さくため息をついた。

「時間があったからソースも作ったの」
「すげぇ。どんなソース?」
 興味深そうにマリューの手元を覗き込む。

「らっきょう漬け」
「え?それって美味しいの?」
 ムウの表情に食えるの?と書いてある。

「食べて」
 マリューはそれ以上何も言わず、ムウの分の揚げ物とソース、キャベツが盛り付けてある皿を手渡す。

「タルタルソースにしてみたの」
 普段は玉ねぎとピクルスを使っているが、なんとなくらっきょう漬けでもいけると思って作ってみた。なかなか帰ってこないムウの心配をしていたので、味見をしていないが。

「いただきます」
 どうだろう。マリューお手製のタルタルソースをたっぷりつけたエビフライを、ムウはパクりと一口食べた。

「美味い!」
 もぐもぐと噛み締めながら美味しそうに告げる。

「あなたの帰る場所は此処よ。まっすぐ私の所へ帰ってきて」
 餌付けしているわけではないが。本当に心配したのだ。

「勤務時間とか関係なく、24時間365日そのつもりだよ」
 とてもとても嬉しそうに笑うので、マリューも毒気を抜かれてしまった。




*****
「お前の帰る場所は此処だ。まっすぐ俺の所へ帰ってこい」の台詞を使ってマリューを書きましょう。
Xで診断メーカーのお題やってみたやつ。
マリュムウのつもりだよ!









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