キス | ナノ
キス
「さりげなく腰を抱けばいつでもキスができると思ったら大間違いです」
「えー」
不満の声を上げる。
「ムウ」
胸板に手を添えられて。
「目、瞑って?」
「え?」
ちょっと期待しつつ、言われた通りにする。目の前の彼女が背伸びをする気配。
それから一瞬の間があって、唇に柔らかい感触がした。
でもすぐにその唇は離れていく。
「ドキドキ……した?」
目を開けると、上目遣いで頬を染めて訊ねてくる。
「した」
「ね、キスってそういうものでしょ?」
ちょっとドヤ顔だ。
「いっつも目開けて表情みて面白がってる人には分かんないでしょうけど」
「バレてた?」
「見られてる方は恥ずかしいのよ」
ツンとむくれて少し尖った唇に、吸い寄せられるようにお返しのキスをした。
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マリューさん、軍服のポケットにいつでも直せるように口紅持ってそうって呟きを拝見して、つい。