エレベーター | ナノ
エレベーター
「じゃ、俺も行くとするかね」
出撃用のパイロットスーツに着替える為に、艦橋から更衣室へと出ていこうとする。エレベーターのボタンを押したその瞬間。
「待って」
マリューが追いかけてきて、開いたエレベーターの扉に一緒に入った。
「気を付けて」
そう呟きながら、俺の顔を見上げる出撃前の瞳の揺らぎはいつも変わらない。
口にしなくても眼差しで伝わる。彼女が次に紡ぐ言葉はきっと『帰ってきてね』。
「もちろん」
帰る場所はここしかないのだから。
エレベーターの扉が閉まったその瞬間。
「かえ……」
予想通りの言葉を紡ごうとしたその震える唇を、己の唇で塞ぐ。
「……んっ……」
震えなくていい。ローズ色の口紅が必要ないくらい血色が良くなるように、優しく食む。じっくり味わう時間がないのは分かっているのだが。
「帰ってくるよ。きみのところに」
何度でも。絶対に。
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エレベーターでキスしないかなってタグをXで作って楽しませて頂きました。