姉弟みたいな | ナノ
「ムウさん!」
「キラ?」
 こっちに向かって駆けてくるキラに呼び止められた。
「どうした?そんなに急いで」
 ずっと忙しかったキラがどこか嬉しそうに寄ってくるなんて珍しい。
「一応お礼が言いたくて……」
「礼って何かあったか?」
 すぐに思いつくような心当たりはない。
「ファウンデーションとの一件で……最後まで僕を信じてラクスを止めようとしてくれてたじゃないですか」
 キラは少し言い出しにくそうに口を開く。
「あの後ムウさんすぐにカガリの密命でいなくなっちゃってたんで……。僕を信じてくれて、ありがとうございました。マリューさんにも伝えといて下さい。ありがとうございましたって」
「マリューにも?」
 キラとマリューはあの後ミレニアムに乗艦するよりも前に合流したと聞いていた。
「マリューさんも居たんですけど……僕アスランに喝を入れられるくらいちょっとかっこ悪いところ見られてたんで、今更言い出しにくくて」
 かっこ悪いところ?
「今更お前のかっこ悪いところ見たって気にしねーよ!」
 笑いながら、キラの頭をワシワシと撫でる。
「だから本当はマリューさんに先に言いたかったのに…」
 どこかブスくれて不貞腐れた声で呟く。
「何で俺よりマリューなんだよ」
 笑いながらキラの肩に腕を回してそう返した時。
「気にしなくていいのに」
 後ろから、ふわりと優しい雰囲気を含んだ聞き慣れた声が響いた。
「キラくんらしくて安心したわ」
 振り返ると、キラと会話しているのに気付いてやってきたのか、マリューがキラに微笑んでいた。
「マリューさん…」
「それはあんま嬉しくないんじゃねぇか、マリュー」
 内容は知らないが、本人がかっこ悪いと言っているのを『らしい』と言うのは男にとっては不服ではないか。キラに目を向けると、案の定複雑そうな顔をしていた。
 マリューが『キラらしくて安心した』と言い切る辺り、どんな本人曰くかっこ悪いところを見せたのか、正直気になってくる。
「かっこ悪くなんてないわ。総裁が……ラクスさんが大好きなのよね」
「大好き?」
 ブッと吹き出しながら、俄然興味が湧いてくる。
「ほらムウさんが興味持っちゃうからやめて下さい」
 キラの顔面が赤い。数年前の坊主みたいだ。
「ピンクのお姫様を泣かせたのか?」
 つい総裁ではなく、懐かしい呼び方が出てしまった。
「ムウさんには言われたくありません」
「俺はもう泣かせてないぞ」
 な、マリュー?と隣に声をかけると。
「さぁ、どうかしらね」
 とニッコリ笑って曖昧な返事が返ってくる。
「本当にお礼を言わなきゃいけないのは、私達の方よ。キラくん」
「え?」
「ねぇ」
 意外そうに少し目を見開いたキラを見て、マリューが目配せしてくる。
「まぁ、そうだな」
 思い当たる節はたくさんある。
「私はキラくんに『こちらを頼みます』って頼まれたもの」
 それは初耳だ。
「何だそれ?」
 問いかける俺を同時に見た後、キラとマリューは二人目を合わせて笑った。
「おい!何だよそれ」
「何でもないわよ」
「何でもないです」
 二人揃って言うから面白くない。
 面白くないが、仲の良い姉弟みたいだな、とふと思って俺も笑ってしまった。




*****
ラクスの決断のギリギリ前ってか決断の瞬間でも止めようとしてたムウさんとシン、マリューさんが好きで書いてみました。
シンいないけど。この後ワンコなシンも「隊長ー!どうしたんすか?」ってルナマリアと来て、楽しくみんなでコンパス会話してて欲しい。








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