着付け | ナノ 「やっぱり歩きにくい〜」
下駄に慣れようと頑張っているが、やっぱりローファーの方が歩きやすかった。
「おぶってやろうか?」
「いい。大丈夫」
珊瑚も弥勒もこれが普通なのだ。犬夜叉なんて裸足だ。早く慣れたかった。
「あの革でできた履物は、確かに頑丈だったよね」
「足袋も我々のものとは違いましたね」
「靴下?」
「ダボダボと重なったやつは尻尾がなくてもあったかそうじゃった」
「ルーズソックス?懐かしいなぁ」
七宝がルーズソックスを覚えていたことに驚きつつ、時の流れを感じる。色んな意味で。

別れ際、弥勒と珊瑚がかごめに声をかけた。
「あんまり無理しないで、急いで慣れる必要なんてないんだから」
「犬夜叉に頼ればいいと思いますよ」
本人もそれを望んでいるようですし、と弥勒がかごめに耳打ちする。小声ではあるが、犬夜叉の耳なら聞こえていそうだ。
こちらに戻ってきてまだ日の浅いかごめを気にかけて、今日は弥勒と珊瑚まで薬草摘みに付き合ってくれた。嬉しいし、賑やかで楽しかったけれど、ずっとこうでいるわけにはいかない。
帰ってそう思いながら、外で汚れた袴を着替えている時だった。
「あれ?結ぶ位置が違う?」
結び終わってから、ふと気付いて手を止めた。
犬夜叉の袴の丈と、かごめの袴の丈が一緒だ。足の長さが犬夜叉と同じになるのは、身長差を鑑みるとおかしいはずだ。
「いやあってる」
立ち上がった犬夜叉が、かごめと向き合う。
「男と女で、腰の結ぶ位置が違うんだろ」
「そうなんだ」
今まで意識したことがなかった。
「おれたちは腰で、こう結ぶ」
火鼠の衣を脱ぐと、犬夜叉の上下は紅白になって緋袴の結び目が分かりやすくなった。
今まで何度も見てきた姿だ。
「かごめたちは、胸のすぐ下の位置で結ぶだろ」
シュル、と犬夜叉の手がかごめの腹部に伸びてきた。
今はしなくなったが、今までだったらブラジャーのアンダーサイズを測っていた、その位置。
「……」
「……」
二人の間に流れた沈黙。
「な!何意識してんのよ!」
「ば、そんなんじゃねぇ!!」
耳まで真っ赤になった犬夜叉の表情から、下心はなかったことがかごめにも伝わった。…多分。ないよね?
「でもまさか犬夜叉に着付けを教えてもらうことになるなんて」
話題を変えるように、かごめは早口で話す。
「何が起こるか分からないわね」
明日ですら、何が起こるか分からない。
「こんなの着付けのうちに入らねーだろ」
「え?」


え?
下心あった?










*****
着付けって難しいですよね。





×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -