雨 | ナノ






突然の雨だった。

「……」

「急ごう」

濡れることなど全く構わず、ただじっと雨雲を見つめ突っ立っているセレニティの手を引く。
少しでも濡れないように自分のマントを二人で被った。

「エンディミオン…!!」

ハッとしたように名を呼ぶ彼女の表情は、好奇に満ちて嬉しそうだった。



***



「すまない…セレニティ。天気のことなど気にかけていなかった…」

雨を凌げるだけの小さな休息所を見つけ、そこで彼女に謝罪をする。

山の天気は変わりやすいというのに…彼女が喜ぶので、つい調子にのって遠出してしまった。

濡らしてしまったのは自分の責任だ。
寒い思いをさせてはいけない、とエンディミオンは自分の上着をセレニティにかけた。


「今のは?」

「え?」

「空からたくさんの水が!!あれは何!?」

目を輝かせて問いかけてくる。


驚いた。

彼女は雨を知らないのだ。



彼女の星では、雨は降らないのだから。

地球に住むものならば、幼子でも知っている、雨。
様々に変わる天気。

それすら知らない…

純粋無垢な少女の素直な反応。


愛しくて仕方がない。


「んっ…」
無言で唇を押し当てる。

「…つめたい」
返ってきた声は、雨音の中で静かに響いた。

雨に濡れた唇は、確かに冷えている。

「けど…」
少しだけ頬を染めて、小さく囁く。

「もっと、触れて」


あなたの温もりで暖めて。

そう言いながら、セレニティは顔をあげ、もう一度口付けをねだる仕草をした。



***



「さっきのは雨といって…たまに空から降ってくるんだ」
「あめ?」
「そう。雨ばかりでも困るけど、雨がなくては地球の生き物は生きていけない」
「…甘くて美味しいあめなら知ってるわ」
「…それは飴」
嬉々として語るセレニティにエンディミオンは笑みを零す。

「飴が降ってくることはないの?」
「あったらもっと早く君に教えてるよ」

笑いながらも、自分を気遣ってくれているのが分かる言葉。

「…ありがとう」

この時間がいつまでもいつまでも続けばいい。


どのような未来が待ち受けていようとも。


あなたを愛せたあたしは、とても幸せだと想う。





*****
エンディミオン視点とセレニティ視点ごちゃまぜで読みにくくてごめんなさい。
決して後悔しない想いですよね。二人の想い。

あなたを愛せたあたしは幸せで、あなたに愛されたあたしは罪人。…かもしれません。

禁断の恋って難しい。






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