その一枚を巡る様々な証言 | ナノ 【その一枚を巡る様々な証言】



元アイドル女優工藤有希子氏の証言
「キラキラ輝いてたわ。新一がそれを手にちょっと緊張した顔をしてて。『どうしたの?新ちゃん、何それ?』って言ったら、新一が答えるよりも早く優作が『書くよ』って。で、その場で書いちゃった!私達が見たのはその一度きりね」





名探偵眠りの小五郎氏の証言
「最初に見た時は、破り捨ててやりたいと思ったよ。だから見えねぇフリして返したんだ。まぁアレは、今となっては悪かったと思ってる」




西の高校生探偵服部平次氏の証言
「オレは見てへんで工藤!せっかくやし見たかったなぁ。オレが書いたってええんやろ?」





法曹界のクイーン妃英理氏の証言
「蘭に頼まれたのよ。あの人もバカね。ついカッとなっちゃったんだと思うわ。私が書いたっていいけど、やっぱり本当はあの人が書きたいはずよ。だから蘭とあの人の所へ向かったの。新一君も一緒にね」





再び名探偵眠りの小五郎氏の証言
「次の時は、英理も居たし、他の奴にはやっぱり書かせたくなかったからな。あったりめーだろ。蘭はオレの娘だ!」





鈴木園子氏の証言
「雑誌の付録についてたの。なんと、新一君と蘭が文化祭で劇をやった時のイラスト付きでね!せっかくだからって蘭にあげたのよ。まさか本当にそれを使うとは思わなかったわ。新一君、なんか自分で準備しそうな感じしたし……18になった日に書いてそうじゃない?アヤツ。流石にそれはないかー!笑」








 婚姻届の証人欄は、両者の父親が書くことが多い。
 民法第739条では、「婚姻届は成年の証人二人以上が署名した書面で、又はこれらの者から口頭で、しなければならない」と定められている。2人の婚姻を認める人であれば、友人知人だって可能だ。
 式や披露宴と同日に提出する人もいれば、事前に二人で提出する人もいる。記念に役所で写真撮影をしてくれることも増えている。
 入籍を済ませてから、二人で式と披露宴の準備を進める二人。
 タイミングは様々。
 これだって最初の選択だ。
 二人で決めて、そこから始まる人生の新たな一歩を踏み出していく。



「よろしく、工藤さん」
 区役所から出た途端、蘭の顔を覗き込みながら新一は悪戯っぽく笑った。
 工藤さん、そう呼ばれることにまだ慣れなくて、むず痒いような照れ臭さが勝る。


「飲食店の待ち人欄に書いて呼ばれるのとか、慣れてるだろ?」
「それはいつも新一が書くから」
 本音を言えばそれだって始めは少し照れくさかったのだ。新一が「工藤、2人」と書いて「工藤様〜」と呼ばれて店内に案内されるのが。

「毛利新一って、言いにくいもんね」
「確かにゴロ悪い気がするけど……いや、それに関してはそういう問題じゃなくて」
 ちょっと焦っように続ける新一が何だか可笑しくて、つい笑ってしまった。

「工藤蘭」
 自分でも小さく音に出してみる。
 やっぱりまだ、慣れない。
 今日を迎えるまでに、何度も想像してみたことはある。どこかふわふわ夢みたいな心地で。でも、これは現実だ。今の現実は、色んなことを経ての辿り着いたもので、これから工藤蘭としてやることもたくさんある。たくさん待っている。新一と一緒に。

「いつかは慣れちゃうのかな?」
 生まれた時から慣れ親しんだ毛利蘭から、新しい工藤姓に。
 胸を占めるのは、くすぐったいような嬉しさと、やっぱり少しだけ残る寂しさ。

「慣れてくれなきゃ困る」
「え?」
「これからずっと、蘭は工藤なんだから」
「う、うん」
 ずっと。新一の言う『ずっと』の響きが耳に印象深く残った。

「本当は……オレは二人きりで祝いたいけど、母さん達が家で張り切って待ってる」
 数日前から、工藤邸で祝おうと準備していた。と話す新一。待ってる、の言葉はやっぱり嬉しい。

「なんだか不思議な感じ」
 幼い頃から何度も訪れた新一の家が、蘭の家になる。
 おかえり、と迎えてもらって、ただいま、と帰る家に。

「工藤さん」
「は、はい」
 新一が蘭の両手を握って、呼び掛ける。

「工藤さん」
「はい」
 ジッと瞳を見つめてくる。

「工藤蘭さん」
「はい」
 照れくささに俯きそうになる気持ちを抑えて、新一の瞳に正面から挑む。

「工藤蘭さん」
「は、はい」
 怯んじゃダメだ。真っすぐ見つめ返せば。

「工藤、蘭さん」
「もう!新一まで照れないでよ!」
 新一の方が耐えられなくなったのか、片手で口元を覆って横を向いてしまった。いや、と謎の否定を返す新一の頬も赤い。

「本当に蘭が工藤になるんだな……って」
 新一は、噛み締めるようにしみじみと呟いた。なるんじゃなくて、なったんだよ。新一。

「よ、よろしくお願いします」
「こちらこそ」
 向かいあってぺこりと頭を下げる。
 それから、新一はまた蘭の右手を左手で握った。

「ずっと、隣に蘭がいた」
「ん?」
 新一がこの街に来て、桜の季節に保育園で出会ってから。ずっと。

「これからも、隣を歩いてくれますか?」
「はい」
 新一の左手にギュッと力が籠る。それが分かったから、同じようにギュッと握り返した。
 ゆっくりまた歩き出す。

「家族ですから」
 今日から、新一が。蘭の。

「工藤家も、毛利家も。どっちも私の家族」
 籍は毛利を外れても。
 新一と蘭が繋げるのだ。

「コナン君だって家族だよ」
 一緒に住んで生活していた頃を思い出す。小五郎と蘭とコナン。あの頃3人は家族だった。

「ずっと」
 新一の言ったように、ずっと蘭の隣に新一がいた。
 それはこれからも。
 これから先、新しい家族が増えたとしても。
 ずっと、蘭の隣には新一がいる。
 終わらない永遠の約束が現実になるように、二人で今を重ねていこう。






*****
間に合わなかったけど、工藤の日ということで、蘭ちゃんに工藤になってもらいました!
蘭が工藤になった日。その証明。
婚姻届の話でしたー!
おっちゃんとこに2回目行くところも書いてみたんですがなんかちょっと切なくなって省略。
工藤家、新蘭お幸せにー!
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