手を繋いでもいいですか? | ナノ




 空座町に新しく出来た「しょっぴんぐもーる」とやらに井上と遊びに行くことになった。
 そこに入っている甘味屋の白玉あんみつがそれはもうものすごーく美味しいと噂らしい。私が気に入りそうな服や小物の店も近くにあるらしく、折角なので井上が案内してくれるそうだ。

「わ〜!休日だからかな。こんなに混んでるとは思わなかったよ」
「それだけ人気だということだな」
 人混みの中に井上と並びながら、店や白玉あんみつへの期待が募る。私は現世の「しょっぴんぐもーる」が初めてなので、少しソワソワしながら辺りを見回していた。先に買い物をして、「らんち」もやっているそうなので昼時に甘味屋に入る予定だ。

「えっと……手を繋いで歩きませんか?」
「ん?」
 顔を覗き込むように言われ、すぐに反応が出来なかった。

「あ、ごめんね。朽木さん、女同士で手繋ぐのとかイヤかな?」
 そう言って、出しかけた手を引っ込めた。

「いや、井上が嫌でなければ全く構わない」
「あたしは全然!」
 井上の細いのにどこかふんわりとした手が私の手を包む。

「これではぐれないね!」
 井上は嬉しそうにブンブンと手を振り回す。

「そうだな。…わっ!」
 私が返事をすると、さらに嬉しそうにグルンと回した。
 井上の方が背が高いから、私は引っ張られてバランスを崩す。

「わ!ごめんなさい!ちょっと調子に乗り過ぎました」
 しっかり手を握って足を踏ん張ると、井上は申し訳なさそうに謝ってきた。

「大丈夫だ」
「ありがとね。朽木さん」
 笑顔でそう言う井上の後ろを、手を繋いだ男女が通り過ぎていった。丁度井上と一護くらいの身長差か。

「一護と歩く時もあの調子なのか」
「え……えぇ!?黒崎くん…!?」
 井上の顔が一気に赤く染まる。

「そそそ、そんな、振り回したりなんて…!そんな…!」
 握っていない方の手も寄せて、モジモジと妙にしおらしくなった。

「なんだ。手は繋がないのか?あ、腕を組むのか」
 井上の後ろを、丁度、腕を組んだ男女が通り過ぎていく。女の方が男の腕にぴったりと体を寄せていた。

「う、ううん!えっとね。なんか一度勢いであたしが腕を組んじゃったことがあってね」
 確かすごく美味しそうなの見つけて嬉しかったから、腕にくっついちゃったって感じだったんだけど…、と井上は困ったように笑いながら続ける。

「黒崎くんビックリしたみたいで。真っ赤になって離れちゃってね。私も自分の行動にビックリして、お互い無言になっちゃって…」
「……たわけめ」
 男の腕にぴったりと寄せてあった女の胸が意図せず浮かび。井上の胸元に目が行く。理由はきっとそれだ。

「頭の中でどうしようってなってたら、『コッチで』って言って黒崎くんが手を繋いで歩き出したから……あたしいっぱいいっぱいになっちゃって!それからつなぐよ。手」
 えへへへへ、と幸せそうに井上は頬を染める。

「そうか」
 私もつられて頬が緩んだ。

「朽木さんは?阿散井くんと手繋ぐ?」
「恋次と?手を繋いでどこかに出かけるようなことがないからな…」
「忙しそうだもんね」
 お互い副隊長でなかなか休みが取れない中、二人の休みが被ることは皆無に等しい。井上の言う「一日デート」は難しいが「お家デート」や「放課後デート」に近いものなら、まぁそれなりに…だ。

「恋次に乗ることはあるが…」
「のる?」
「ああ」
「移動する時?」
「そうだ。最近はよく乗せてもらうな」
「そうなんだ!」
 肩車とかも出来るぞ!と言うと、すごいね!あたし肩に担がれたことしかないよ〜と井上は笑った。







「手は繋がないけど、朽木さんはよく阿散井くんに乗るって!」
「乗るって……お前らどういう話してきたんだよ」
「色んなパターンがあってね!こう肩触って…」
「それ以上はヤメロ」
「どうしたの?黒崎くん、顔赤いよ?」




*****
ツイッターで台詞リクエスト企画をやっておりまして、葵さんより頂きました!ルキ織で「手を繋いで歩きませんか?」です。
ルキ織ってか織ルキってか一織恋ルキになりました。

一織は大学生です。
可愛い子二人だと絶対声かけられるから、実は男2人もこっそり来てたとか考えたんですが少女漫画過ぎて断念。(笑)

一護がムッツリスケベみたいになっててすみません。思いついたら止められませんでした!(土下座)
葵さん、素敵なリクエストありがとうございました〜!









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