へみさんバースデー | ナノ




「犬夜叉ーーー!!!」
 かごめの喉から絞り出されるひび割れた声を、犬夜叉はどこかとても遠い場所で聞いた。
 世界が全ての色を失い、匂いも、音も、極限まで希釈された。
 ほぼ無感覚の世界で、腹部だけがギリギリと鋭く痛む。臓器だけでなく肋もいったかもしれない。

「犬夜叉!犬夜叉!!」
 必死に名を叫ぶ声に重い瞼を開くと、今にも泣き出しそうなかごめの顔があった。

「犬夜叉……よかった、生き、て……」
 生きてて、と言葉にならないようで、彼の首元にギュッとしがみ付いてくる。その手には、敵に奪われていた鉄砕牙があった。

「かごめ……」
 口を出た声はしゃがれていた。目線で彼女の表情を追おうとした時。
 肩越しに、地面に突っ伏した敵の腕が動くのを見た。そのまま立ち上がろうと地面に腕をついている。

「離れろ、かごめ!」
「……イヤ」
「バカ、何言ってやが……」
「イヤ!!」
 固い意志を持ったかごめの反応に困惑する。
 その間にも、敵は膝をついて這い上がる。
 かごめを死なせるわけにはいかない。絶対に。

「だったら……動くなよ」
 彼女の耳元で囁いて、どうにか右手を動かして穴の開いた腹に当てる。生温かい血がべっとりと指全体についた。

「飛刃血爪!!」
 左手でかごめを支えながら、血の刃を繰り出す。

「これが精一杯か?」
 難無くかわした敵が、ニヤリと笑う。
 犬夜叉自身、当たるなんて思っていなかった。ただ向こうが体勢を立て直す間の時間稼ぎだ。

「かごめ」
 呼んで、鉄砕牙を持つかごめの手を上から包む。

「犬夜叉……」
 不安げな表情を隠しもせず、かごめは犬夜叉の金色の瞳を真っ直ぐ見詰める。

「おれは死なねぇ」
 毅然と響いたその声は、溢れ出した彼女の危惧を堰き止めるのに、充分な強さを持っていた。

「うん」
 キュッと唇を噛み締めて、鉄砕牙を差し出す。
 犬夜叉はそれをしっかりと受け取った。
 そして、かごめを背後に庇う様に立つ。

(長くはもたねぇ)
 ドクドクと心臓が脈打つのに合わせて、地面の血溜りは広がっていく。今にも意識が飛びそうだ。
 それでも、ここで己に負けるわけにはいかない。
 ―――かごめを、死なせるわけにはいかない。

「ウオアアアッ!!」
 獣じみた咆哮を轟かせ、犬夜叉は鉄砕牙を大きく振りきった。






*****
へみさんお誕生日おめでとうございます!!
いつもお世話になっております!雷獣兄弟面白すぎて戦国でもTwitter上でも最強だと思ってます(o^ O^)シ彡☆

かごめぇぇぇぇ!な話を書くはずが…すみません。犬夜叉ぁぁぁぁぉ!な話になりました(笑)
相変わらず戦闘系は勢いだけなのでよく分からないものになってしまい…。
離れたがらないかごめちゃんとか別人捏造ですね。
人間と妖怪ペアの敵との闘いで、人間に鉄砕牙奪われて…妖怪と犬夜叉が闘ってる間にかごめが人間の方をなんとかして鉄砕牙取り返した…とかそんな感じの話を妄想したんですが、書けなくて結局犬かごシーンだけっていう(笑)
こんなのですが、お誕生日をお祝いしたい気持ちはいっぱいです!へみさん、おめでとうございますー!素敵な一年になりますように!!(*^^*)






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